2019年12月3日(火)



「本日2019年12月3日(火)にEDINETに提出された全ての法定開示書類」


Today (i.e. December 3rd, 2019), 159 legal disclosure documents have been submitted to EDINET in total.

本日(すなわち、2019年12月3日)、EDINETに提出された法定開示書類は合計159冊でした。

 

 

 

2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計350日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜2019年4月30日(火))
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

各コメントの要約付きの過去のリンク その2(2019年5月1日(水)〜2019年8月31日(土))
http://citizen2.nobody.jp/html/201905/PastLinksWithASummaryOfEachComment2.html

各コメントの要約付きの過去のリンク その3(2019年9月1日(日)〜)
http://citizen2.nobody.jp/html/201909/PastLinksWithASummaryOfEachComment3.html


 

 



アステラス、米バイオを3200億円で買収 遺伝子治療強化

アステラス製薬は3日、医療系スタートアップの米オーデンテス・セラピューティクス(カリフォルニア州)を
約30億ドル(約3200億円)で買収すると発表した。希少疾患向けの遺伝子治療技術を取得する狙い。
アステラスは買収を通じて新たな遺伝子治療技術を手に入れるとともに、
今後、米国を中心に希少疾患領域での事業拡大を進めたい構えだ。
数週間以内にオーデンテス社の発行済み株式のすべてをTOB(株式公開買い付け)し、約20日間で終了する予定。
取得価格は1株60ドルと、オーデンテス社の2日の終値(28.61ドル)の約2.1倍となる。
オーデンテス社は2012年創業のバイオスタートアップ企業で、
主に遺伝子の運び手となるアデノ随伴ウイルス(AAV)を使った遺伝子治療技術に強みを持つ。
アステラスは自社のノウハウにオーデンテス社の技術を融合させ、開発をスピードアップさせたい考えだ。
遺伝子治療薬は病気の原因部分に治療遺伝子を直接届ける仕組み。
長期間にわたって治療効果が続くため、次世代医薬品の本命として開発が加速している。
遺伝子治療を巡っては18年にスイスのノバルティスが米アベクシス社を87億ドルで買収したほか、
19年2月にはスイスのロシュが米スパーク・セラピューティクスを買収することで合意したと発表した。
米ファイザーも3月に仏バイオベンチャー、ビベット・セラピューティクスの株式15%を4500万ユーロ(約55億円)で取得する
と発表するなど、大手製薬による買収が相次いでいる。
米スパークの網膜の難病向け遺伝子薬「ラクスターナ」は両眼で85万ドル(約9300万円)、
アベクシスの乳幼児の遺伝子難病の治療薬「ゾルゲンスマ」は212万ドル(約2億3000万円)と超高額な薬価が話題になった。
日本では大阪大学発スタートアップ、アンジェスが開発した遺伝子治療薬「コラテジェン」が8月に国内で初めて承認されている。
(日本経済新聞 2019/12/3 9:08)
ttps://www.nikkei.com/article/DGXMZO52884320T01C19A2MM0000/

 

 


2019年12月3日
アステラス製薬株式会社
米国 Audentes社買収に関する契約締結および株式公開買付けの開始予定に関するお知らせ
ttps://www.astellas.com/jp/system/files/news/2019-12/20191203_jp_3_1.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)




 

注:
対象会社であるAudentes Therapeuticsのウェブサイト上にあるこの件に関するプレスリリース("Recent News")です↓。


Dec. 2, 2019
Astellas Pharma Inc.
Audentes Therapeutics, Inc.
Astellas Enters into Definitive Agreement to Acquire Audentes Therapeutics
ttps://audentestx.gcs-web.com/news-releases/news-release-details/astellas-enters-definitive-agreement-acquire-audentes


しかし、このプレスリリースは、"BUSINESS WIRE"というプレスリリース配信サイトからの引用という位置付けのようです。
配信元である"BUSINESS WIRE"上のページはこちらです↓。

ttps://www.businesswire.com/news/home/20191202005969/en/

日本にも「PR TIMES」というプレスリリース配信サイトがありますが、
外部のプレスリリース配信サイトにアップロードしたプレスリリースを自社ウェブサイトでもアップロードするというのは
やはり情報開示の点で問題がある(投資家の負担が無意味に大きくなってしまう)と思います。

 

 

 


【コメント】
アステラス製薬株式会社はAudentes Therapeutics, Inc.に対し現金を対価とする公開買付を実施する計画であるわけですが、
アステラス製薬株式会社が発表しているプレスリリースを読んでいましたら、次の一文が目に止まりました。

>Audentes社の取締役会は、本公開買付けへの応募をAudentes社株主に推奨する旨の決議をしています。

買収提案が行われるに際しては、日本でも対象会社が買収提案に対する意見を表明することがありますし、
特に公開買付が実施される場合は対象会社は意見表明報告書を提出せねばなりません。
その意味では、Audentes社が公開買付への応募を自社株主に推奨したとしても何らおかしくないわけですが、
最近日本では株式を対価としたM&Aが法制度上の話題になっていますので、
対価の種類が現金か株式かでは話が大きく異なるな(特に対価を受け取る投資家の立場に立てば)と個人的には思いました。
実は以前もこの点については書いたことがあるように思うのですが、
「特に対価が現金の場合は対象会社は意見を表明する必要はないのではないか?」と改めて思いました。
なぜならば、対価が現金の場合は既存株主は買収提案に応じるか否かを自分の投資能力だけで十分に判断できるからです。
逆から言えば、対価が株式の場合は既存株主は買収提案に応じるか否かを自分の投資能力だけでは十分に判断できない、
という言い方ができると私は考えます。
なぜならば、既存株主は買収会社のことを何も知らないからです。
対価が株式である場合、既存株主は買収会社株式の本源的価値を算定できませんので、
「自分が受け取る対価が妥当であるか否か?」という点について既存株主は投資判断ができないと言っていいのです。
この点について整理をするために、今日は次のような表を作成してみましたので参考にして下さい↓。


「対象会社はどのような場合に買収提案に対する意見を表明してよいのか?」

「PDFファイル」

「キャプチャー画像」

 

 


所有株式売却の対価が買収会社株式である場合、
通常は「既存株主は買収会社株式の本源的価値を算定できない。」という状態に既存株主は陥るわけですが、
この点について次のような概念図を描いてみましたの参考にして下さい↓。

「投資家は対象会社には明るいが買収会社には明るくない。」


買収の対価が現金の場合は何らの問題もない。
買収完了後は既存株主は既に対象会社の株主ではないからだ。
既存株主が買収提案に応じるか否かを判断し意思決定すればよい。
しかし、対価が株式の場合は、既存株主は、買収完了後も直接的に(合併の場合)もしくは間接的に(公開買付等の場合)
対象会社の出資者のままであり委任者のままである。
委任者による証券投資や投資判断に貢献するという観点から言えば、
対価が株式の場合は対象会社は買収提案に対する意見を表明すべきだ。


「対価が買収会社株式」の場合は、対象会社の株主構成は以下のようになり得るわけです。

○買収に反対の意見表明をする場合→対象会社の株主構成は同じなまま→既存株主は委任者のまま
○買収に賛成の意見表明をする場合→議決権割合は変動するが結局既存株主は株主のまま→既存株主は委任者のまま

「対価が買収会社株式」の場合は、既存株主の利益を害する形で会社や経営陣が保身を図るという側面がない
と言えるわけです。
つまり、「対価が買収会社株式」の場合は、対象会社が買収提案に対して意見を表明しても、
保身の意味合いはないと言えるわけです。
しかし、「対価が現金」の場合は、買収の成否次第では既存株主が株主ではなくなるため、
既存株主の利益を害する形で会社や経営陣が保身を図るという側面が出てくるわけです。
「対価が現金」の場合は、既存株主の立場からすると、
「買収に応じるか否かは自分で判断できることなのに、なぜ対象会社は意見を表明しているのだろうか?」
と勘ぐりたくなるわけです。
したがって、投資家による投資判断に資するために、そして、委任者の利益のために、
対象会社は「対価が買収会社株式」の場合にのみ意見を表明するべきだと私は考えます。
現金はその額がそのままその絶対的価値を表します。
しかし、投資家(既存株主)には買収会社株式の本源的価値は分からないのです。

 


また、買収会社について詳しく知り得る立場にいるのは現実には対象会社しかいません。
1999年10月以前の伝統的な証券制度において主幹事証券会社が発行者の内部情報を入手・吟味して株式の本源的価値を
算定していたように、「対価が買収会社株式」の買収においては対象会社が買収会社の内部情報を入手・吟味して
株式の本源的価値を算定する(既存株主の利益を代表して、です)、ということが求められるように思います。
"counter due diligence"(カウンター・デュー・ディリジェンス)という言葉を私は考え付きました。
"counter due diligence"の意味合いを踏まえ、「応対資産精査」という日本語訳も自分で考えました。
「応対」」とは「相手の話をよく聞き、その内容に応じた返事(事)をすること。」という意味ですが、
買収提案に応対し、対象会社が買収会社に対し"due diligence"を行うので"counter due diligence"であるわけです。
投資家(既存株主)が株式を対価とする買収提案に関する意思決定を行えるようにするために、既存株主の利益を代表して、
買収会社の実態を把握し問題点を洗い出すとともに買収後の事業計画は株主の利益に適うのか否かを判断することを目的に
対象会社が買収会社に対し調査を実施する、ということが「対価が買収会社株式」の場合には求められると私は思います。
「私共は株主の利益を代表しています。」と対象会社の経営陣は買収会社に言わねばならないのです。

 

 


Is each shareholder of a subject company scheduled to stay a shareholder after a M&A
or to be a shareholder of an acquiring company after a M&A?

対象会社の各株主は、M&A後も株主のままの予定なのですか、すなわち、M&A後は買収会社の株主となる予定なのですか?

 

An investor invests in a company because the investor is able to undetstand the company.

投資家は、その会社のことが理解できたからその会社に投資をするのです。

 

In case a kind of a consideration is cash, it means an "exit,"
whereas, in case a share, a "continuation of an investment."

対価の種類が現金の場合は「退出」を意味するのですが、対価の種類が株式の場合は「投資の継続」を意味するのです。

 


In case a kind of a consideration is an acquiring company share,
shareholders of a subject company must know what the acquiring company share is.

対価の種類が買収会社株式である場合は、
対象会社の株主はその買収会社株式がどれほどの価値をもつものなのかを知らなければならないのです。

 

 



Plainly speaking, a reason why a subject company all the way expresses its opinion about a M&A for it is
that its expression is contributory to an investment judgement by investors in the market.
In other words, a subject company expresses its opinion
purely on behalf of an investment judgement by investors in the market,
not on behalf of a business operation by its management,
much less on behalf of a self-defense of its management.
So, if a subject company expresses its opinion about a M&A for it notwithstanding the fact that a consideration is cash,
its expression can imply its inner desire for its current condition and position
or can not be made on behalf of interests of shareholders.

端的に言えば、対象会社が自社に対するM&Aについてわざわざ意見を表明する理由は、
その意見表明は市場の投資家による投資判断に資するからなのです。
他の言い方をすれば、対象会社が自社の意見を表明するのは、純粋に市場の投資家の投資判断のためなのです。
経営陣による事業運営のためではありませんし、ましてや経営陣の保身のためではありません。
ですので、対価が現金であるにも関わらず対象会社が自社に対するM&Aについて意見を表明するならば、
その意見表明は現在の状態と地位に対する内心の願望を暗に意味し得る、すなわち、
その意見表明は株主の利益のためになされたわけではない可能性があるのです。