2019年8月7日(水)



2019年8月7日(水)日本経済新聞
ユニゾHD TOBに反対表明 HIS、敵対的買収に
ユニゾHD株 5.51%保有 米エリオット
(記事)






2019年8月6日
ユニゾホールディングス株式会社
株式会社エイチ・アイ・エスによる当社株券に対する公開買付けに関する意見表明(反対)のお知らせ
ttps://www.unizo-hd.co.jp/news/file/20190806_1.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)




2019年8月6日
ユニゾホールディングス株式会社
株式会社エイチ・アイ・エスによる当社株券に対する公開買付けに関する意見表明(反対)の概要
ttps://www.unizo-hd.co.jp/news/file/20190806_2.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)

 

 


2019年8月6日
株式会社エイチ・アイ・エス
ユニゾホールディングス株式会社(証券コード:3258)からの公開買付けに関する意見表明(反対)についての当社の対応について
ttps://www.his.co.jp/wp-content/uploads/20190806.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



R1.08.06 15:50
ユニゾホールディングス株式会社
訂正意見表明報告書
(EDINET上と同じPDFファイル)



 


2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計232日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜2019年4月30日(火))
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

各コメントの要約付きの過去のリンク その2(2019年5月1日(水)〜)
http://citizen2.nobody.jp/html/201905/PastLinksWithASummaryOfEachComment2.html

 


 



【コメント】
株式会社エイチ・アイ・エスによるユニゾホールディングス株式会社株式に対する公開買付は、
公開買付について非常に多くの新しい観点に気付かせてくれるように思いますが、一言だけコメントを書きたいと思います。
ユニゾホールディングス株式会社がこのたび公開買付に反対の意見表明をしたことを受けて、記事には次のように書かれています。

>HISのTOBは敵対的買収に発展することになった。

しかし、ユニゾホールディングス株式会社が公開買付開始当初は意見を「留保」したという時点で、
この公開買付は敵対的公開買付である、という見方になるように私は思います。
というのは、友好的な公開買付というのは、公開買付が開始されることを対象会社は予め知っているものだからです。
友好的な公開買付が行われる場面では、公開買付者も対象会社と協議の上で公開買付を開始するものです。
対象会社は公開買付が実施されることを事前には全く知らなかったのだが、その公開買付は友好的な公開買付である、
ということは少なくとも実務上はないわけです。
公開買付完了後のグループ経営を鑑みれば、友好的な公開買付には「段取り」と呼ばれるものがあるわけです。
最初期の公開買付制度では、公開買付者が公開買付を実施するのに対象会社の同意すら必要だったわけです。
友好的な公開買付というのは、少なくとも実務上は、対象会社に対して事前の通知・連絡を行った上で開始するものなのです。
やや乱暴に言えば、公開買付者が対象会社に対して何らの事前の通知・連絡もないまま突然公表・開始をする時点で、
その公開買付は敵対的公開買付なのです。
せいぜい、「買付価格自体は確かに非常に高いから『反対』の意見を表明すると投資家にとって非常に有利な株式売却の
機会に反対していることになってしまう。だから、ここはとりあえず『賛同』の意見を表明することにしよう。」
と言って、対象会社が公開買付に賛成する、ということはあり得るくらいでしょう(真の意味の友好的な公開買付ではない)。
それから、公開買付が対象会社と事前に協議を行って公開買付を実施するという点に関してですが、
公開買付者は開示情報以外の情報をも入手した上で公開買付を実施することになるわけですから、
インサイダー取引の論点が浮上することにはなります。
この点に関しては、実務上の答えを出すのは非常に難しいと思います。
今の私には、この論点について答えを出すことはできません。
ただ、1999年10月以前の伝統的な証券制度における公開買付は、
「開示はされていないインサイダー情報を基にして実施するのが公開買付であった。」
という言い方ができると思います
なぜならば、1999年10月以前の伝統的な証券制度における公開買付では、公開買付者は創業者だったからです。
率直に言えば、1999年10月以前の伝統的な証券制度における公開買付は、むしろインサイダー取引が前提だったのです。
公開買付というのは「株式市場における投資家間の株式の売買」とは全く異なる性質を持った株式売買制度である、
というのが、1999年10月以前の伝統的な証券制度における公開買付の考え方であったのだと思います。
「今現在の経営陣が経営を行なうよりも公開買付者が経営を行なった方が発行者の株式の価値はより高まるはずだ。
そしてそのことは、市場の投資家の利益を害するものでは決してない。発行者の株式の価値がより高まるのであれば、
インサイダー情報に基づく株式取得の結果創業者が利得を得ることは市場の投資家の利益を犠牲にするものでは全くない。」、
そのような考え方が背景にあって、1999年10月以前の伝統的な証券制度では、
インサイダー情報に基づく公開買付が容認されていた、ということではないかと私は考えます。
今日における公開買付においても、同様の考え方が求められるのかもしれないな、と思いました。

 

 


Quite contrary to the traditional securities system before October, 1999, on the current securities system,
the most important material for an investment judgement to investors in the market is
not documents submitted by a tender offerer but documents submitted by a subject company.
A subject company knows itself better than a tender offerer does.

1999年10月以前の伝統的な証券制度とは正反対に、現行の証券制度では、
市場の投資家にとって投資判断のために最も重要な資料は、
公開買付者が提出した書類ではなく、対象会社が提出した書類なのです。
公開買付者よりも対象会社の方が対象会社についてよく知っているのです。

 

Just as a tender offerer must make the related "advice" appear in a daily newspaper
when it submits a tender offer notification in addition to the submission itself of the document,
especially on the current securities system, a subject company must make the related "advice" appear in a daily newspaper
when it submits a position statement and a tender offerer's answer in addition to the submission itself of the document.
Even a submission of a legal disclosure document can't come to investors in the market's knowledge by the submission only.
Without the related "advice" appearing in a daily newspaper,
investors in the market can't know the fact itself that the document has been submitted.

公開買付者は公開買付届出書を提出する時には書類の提出そのものに加え
関連する「お知らせ」を日刊新聞紙に掲載しなければならないように、
特に現行の証券制度においては、対象会社は意見表明報告書や対質問回答報告書を提出する時には書類の提出そのものに加え
関連する「お知らせ」を日刊新聞紙に掲載しなければならないのです。
たとえ法定開示書類が提出されても、提出されたというだけでは市場の投資家は提出されたことを知ることはできないのです。
関連する「お知らせ」が日刊新聞紙に掲載されなければ、
市場の投資家は書類が提出されたという事実それ自体を知ることができないのです。

 

It is true that a founder gains a profit by taking advantage of his "insider information,"
but, at the same time, as a result of that tender offer,
investors in the market can also gain a profit and the value of a share of an issuer also increases.
Plainly speaking, a tender offer on the traditional securities system before October, 1999
used to be "Sanpo-yoshi" in Japanese (benefit for all three sides), actually.

確かに、創業者は自分の「インサイダー情報」を利用することで利得を得るわけですが、
しかし同時に、その公開買付の結果、市場の投資家もまた利益を得ることができますし発行者の株式の価値も高まるのです。
率直に言えば、1999年10月以前の伝統的な証券制度における公開買付は、
実は、日本語の「三方よし」(三者全員の利益になること)だったのです。

 

 


それから、ユニゾホールディングス株式会社のウェブサイトには次のようなプレスリリースがありました↓。

 

2019年8月1日
ユニゾホールディングス株式会社
当社連結子会社による固定資産の譲渡及び特別損益の計上に関するお知らせ
ttps://www.unizo-hd.co.jp/news/file/20190801.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)


4.譲渡日
5.今後の見通し
(1〜2/2ページ)




資産譲渡のための取締役会決議を取ったのは2019年8月1日であったわけですが、
2019年7月29日に開示した業績予想には資産譲渡に伴う譲渡益の金額を既に織り込んでいる、とプレスリリースには書かれています。
しかし、資産譲渡を行うための契約締結の前に譲渡益の金額が分かるということは厳密に言えばあり得ないわけです。
資産の譲渡先(交渉の相手方)が交渉の席で「もう少し値下げをしてくれれば購入したいのですが。」と言うことはあるわけです。
また、「複数候補先との間で交渉を行った結果」とプレスリリースに書かれていますように、
購入候補者が複数の場合はなおさら「誰がいくらで買うと申し出るか」は事前には決して分からないわけです。
譲渡先も譲渡益の金額も確定するのは契約締結の時点でである、という考え方になります。
契約締結の前に譲渡益の金額を稼ぐことができると見なすというのは、"estimate"(見積もる)ではなく、
もはや"assume"(思い込む)や"hypothesize"(仮説を設ける)の意味合いに近いと私は考えます。
ただ、今私が言っていることを突き詰めて考えますと、「そもそも業績予想というのはできない。」という結論になるでしょう。
まあ、「安定的・経常的な事業運営のみを行うとしたら」という想定を置けば、一定度の業績予想はできるとは思いますが。

 

 


ユニゾホールディングス株式会社の業績予想について上記のように書きましたが、その後になって、今EDINETを見ていましたら、
驚いたことに上記の資産譲渡に関連して「臨時報告書」がユニゾホールディングス株式会社から提出されていました。


R1.08.02 09:01
ユニゾホールディングス株式会社
臨時報告書  
(EDINET上と同じPDFファイル)



臨時報告書は文字通り臨時(予定されたもの以外のもの)に提出されるものであるわけです。
「臨時」の反意語が「経常」であるわけです。
臨時報告書は公式英訳では"Extraordinary Report"と訳されています。
ユニゾホールディングス株式会社にとって、上記の資産譲渡は予定外のこと(少なくとも経常的な取引ではない)
であるのはやはり間違いないわけです(仮に会社にとって予定通りならば、臨時報告書を提出する必要はないはずです)。
臨時報告書の【提出理由】には、次のようにはっきりと書かれています。

>当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に著しい影響を与える事象が発生いたしました

しかも、「当該事象の発生年月日」は、「令和元年(2019年)8月1日(取締役会決議日)」と書かれています。
やはり、2019年7月29日に開示する業績予想に資産譲渡に伴う譲渡益の金額を織り込むことは、時間的に不可能だと私は思います。
端的に言えば、将来の業績を予想するためには、事業運営の全てが経常的("ordinary")でなければならないわけです。
逆から言えば、損益計算書に特別損益が計上される時点で、将来の業績を予想することはできなくなる、ということになります。
1999年10月以前の伝統的な証券制度では、理論上は実は上場企業は特別損益を計上してはならなかった、ということになります。

 

The amount of a profit to be generated in the future transaction
can't be woven into an "estimated value" before the contract date.
For not only the counterparty of a transaction but also the amount of the profit
is finalized as on the contract date.

将来の取引において発生する利益額を契約締結日の前に「業績予想」に織り込むことはできないのです。
というのは、取引の相手方だけではなく利益の金額も契約締結日に確定するからです。

 

To put it simply, without a resolution of a board of directors, you can sign a contract.
A resolution of a board of directors precedes entering into a contract.

簡単に言えば、取締役会決議がなければ契約書に署名ができないのです。
契約締結よりも取締役会決議が先に来るのです。