2019年7月28日(日)


2019年7月24日(水)日本経済新聞
HISのTOB 意見留保 ユニゾHD
(記事)



2019年7月23日
ユニゾホールディングス株式会社
株式会社エイチ・アイ・エスによる当社株券に対する公開買付けに関する意見表明(留保)のお知らせ
ttps://www.unizo-hd.co.jp/news/file/20190723.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)




2019年7月23日
株式会社エイチ・アイ・エス
ユニゾホールディングス株式会社株式(証券コード:3258)に対する公開買付けに関して
ttps://contact.his.co.jp/pdf/20190723-1.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)

 

 


R1.07.23 15:08
ユニゾホールディングス株式会社
意見表明報告書
(EDINET上と同じPDFファイル)



R1.07.23 16:54
株式会社エイチ・アイ・エス
訂正公開買付届出書
(EDINET上と同じPDFファイル)



2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計222日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜2019年4月30日(火))
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

各コメントの要約付きの過去のリンク その2(2019年5月1日(水)〜)
http://citizen2.nobody.jp/html/201905/PastLinksWithASummaryOfEachComment2.html

 

 



【コメント】
2019年7月23日にユニゾホールディングス株式会社は、金融庁に意見表明報告書を提出し、
また、自社ウェブサイト上に基本的趣旨は同じプレスリリースを発表しました。
ただ、ユニゾホールディングス株式会社からの公開買付に対する意見としては、
「現時点においては、本公開買付けに対する意見の表明を留保いたします。」となっています。
その理由について、紹介している2019年7月24日(水)付けの日本経済新聞の記事には次のように書かれています。

>ユニゾHDによると、現時点では両社の業務提携で生れるシナジーの有無やTOBの是非を検討する上での情報が乏しいと判断した。

2019年7月23日にユニゾホールディングス株式会社が発表したプレスリリースには、
「公開買付者に対する質問」が記載されているわけですが、ユニゾホールディングス株式会社はこれらの質問と回答を通じて、
公開買付の是非やその諸条件についてさらに詳細に評価・検討を進めていきたいと考えているわけです。
意見表明報告書とプレスリリースにも、両社の業務提携で生れるシナジーの有無やTOBの是非を検討する上での情報が乏しい
という趣旨のことが書かれているわけですが、意見表明報告書には次のように書かれています。

3 【当該公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由】
(2) 本公開買付けに関する意見の根拠及び理由
(2/5ページ)

>本公開買付届出書に記載された内容を含め、現時点までに当社が入手することができた情報のみでは、本公開買付けの目的、
>本公開買付け後に公開買付者が企図する当社との資本提携を含む業務提携の具体的な内容及びその結果として見込まれる
>シナジーの有無、本公開買付けにおける買付け等の価格の根拠その他の本公開買付けの是非及びその諸条件について
>評価・検討する上で重要であると考えられる多くの事項の詳細が明確ではありません。

上記の引用文中の1つ目「当社」を「株式会社エイチ・アイ・エス」に置き換えても、今日の議論では意味が通ると私は思います。
公開買付者が公開買付を実施する検討を行なうというだけの時点では、公開買付の是非やその諸条件について評価・検討する上で
重要であると考えれる多くの事項の詳細が明確ではない、という言い方ができると私は思います。
公開買付について判断するための情報が不足しているのは、対象会社であるユニゾホールディングス株式会社だけではなく、
公開買付者である株式会社エイチ・アイ・エス自身も実は同じなのです。
意見表明報告書を通じて公開買付者自身が公開買付の是非やその諸条件について評価・判断ができる情報が開示される、
という証券制度が望まれると私は思います(公開買付者は対象会社について知っていることが実務上はあまりに少ないのです)。
市場の個人投資家は対象会社と事業運営上協働はしませんが、公開買付者は公開買付後対象会社と事業運営上協働をするのです。
事業運営上協働をすることを前提とした追加的な情報開示が対象会社には求められる、という言い方ができると私は思います。
逆から言えばと言うのも何ですが、1999年10月以前の伝統的な証券制度では、上場前からの株主しか公開買付を実施できなかった
わけですが、その理由はたとえ対象会社から追加的な情報が一切開示されなくても公開買付者は対象会社のことを始めから・既に
十分に知っているからである(当時であれば特段の公開買付者保護策は不要だった)、という言い方ができるのかもしれません。
対象会社は、株主に応募の是非に関する判断材料を提供する(株主の投資判断を助けようとする)ことを目的とするだけではなく、
公開買付者に公開買付の実施に関する判断材料を提供することをも目的として、意見表明報告書を提出しなければならないのです。
それから、昨日のコメントでは、極端な例として、「役員選任議案の全て(候補者10名全員)に反対票が投じられることと、
今後ともヤフーとの資本・業務提携提携を継続すること、どちらの方が株主全体の利益に適うか、を考えてアスクルの取締役は
業務を執行していかなければならない、という点について書きましたが、会社の取締役は、個々の株主の利得に拘泥するのではなく、
常に「株主の皆様の共同の利益」を念頭に置いて業務を執行しなければならないのです(それがまさに「受託者責任」です)。

 

 


上記の議論と類似・関連する論点(開示されている情報だけでは公開買付の是非を判断するには不足している)になりますが、
2019年7月23日に株式会社エイチ・アイ・エスが発表したプレスリリースには、以下のように書かれています。

>当社としましては、ユニゾホールディングス株式会社からの質問に真摯に回答することで、
>本公開買付けの実施にご理解頂けるものと考えており、早急に回答すべく準備を進めております。

しかし、このプレスリリースを読んで、私は「これは逆の結果になることもあり得るな。」と思いました。
すなわち、対象会社からの開示内容次第では、公開買付者の方が公開買付を経営上自主的に断念する、
ということがあり得ると私は思いました。
「株式会社エイチ・アイ・エス様からの公開買付の表明を受けて、弊社で公開買付について検討を行ったのですが、
その中で、株式会社エイチ・アイ・エス様が弊社の支配株主になった場合にはこのような事業運営上の不利益が
双方に生じるということが判明いたしました。弊社単独で事業を営む限りはこの論点は問題とならないのですが、
双方が営んでいる事業内容を精査いたしますと、このようなディメリット(互いに無意味に競合してしまう等)が生じ得ます。
株式会社エイチ・アイ・エス様はまだこのことをご存じないのではないかと思いますので、お知らせいたします。」
という内容の意見書が対象会社から発表されると、公開買付者としては公開買付を断念せざるを得ない事態が生じます。
株式会社エイチ・アイ・エスとしては、公開買付後の経営のことを事前に十分に考慮した上で公開買付を実施することを
意思決定したものの、有価証券報告書や適時情報開示や可能な限りのデュー・ディリジェンスからだけでは分からなかった
対象会社に関する重要事実が、対象会社からの意見表明報告書を通じて初めて明らかになる、ということが現実にあり得るわけです。
公開買付後に公開買付者が進めていこうと考えている諸施策が、実際には様々な事情により実行は不可能であるということが
対象会社自身から説明・開示されて初めて分かる、ということは実務上あるわけです。
簡単に言えば、公開買付者が知らなかった重要事実が対象会社から開示される、ということがあり得るわけです。
「そのことを事前に知っていれば、私共は公開買付を実施することを意思決定したりはしませんでした。」
と言いたくなることが実務上はあるわけです。
公開買付者が事前に精査できる範囲・内容には限界があるわけです。
公開買付者が公開買付を実施する意思表示をして初めて対象会社から開示される情報(重要事実)も実務上はあるわけです。
そのようなことを考えますと、公開買付の開始は対象会社から意見表明報告書が提出された後、という考え方もあると思います。
公開買付者は、対象会社から提出された意見表明報告書を踏まえて、公開買付を開始するかどうかを決めることができる、
という証券制度が考えられると思います。
公開買付者が対象会社に公開買付を実施する旨公表をした後は、さらに条件のよい買付条件で公開買付を実施する会社が
現れないかどうか一定期間待機しなければならない、という考え方が諸外国にはあると思いますが、
市場の投資家保護ではなく公開買付者保護のようにもなってしまいますが、
その条件で公開買付を実施するということで本当によいのかどうかを考える期間・機会を公開買付者に与える、
という証券制度も考えられると私は思います。
「対象会社は公開買付完了後にグループ経営が行なわれるに当たり公開買付者に不利に働く未公表の重要事実があれば、
意見表明報告書の中で必ず開示しなければならない。」、という証券制度も考えられると私は思います。
対象会社が提出している有価証券報告書や発表している適時情報開示はあくまで対象会社単独で事業を営む場合の情報開示です。
経営統合やグループ経営が行われることを前提とした情報開示ではないわけです。
経営統合やグループ経営を契機に双方の会社で発生し得るディメリットというものが実務上はあるわけです。
対象会社が提出した意見表明報告書を見て、公開買付者の経営統合への情熱が"cooling-off"する(冷めてしまう)こともあり得ます。
公開買付という場面では、公開買付者も1人の投資家である(不十分な開示情報で株式を買っていい存在ではない)と言えるわけです。
1999年10月以前の伝統的な証券制度ではないのです、公開買付者を証券制度上保護する必要はない、ということは決してありません。
「公開買付は対象会社から意見表明報告書が提出された後から開始される。」という証券制度が「投資家」保護の観点から望まれます。

 

 


This is at last close to a tautology or the definition itself,
but a controlling sharholder of a company controlls the company.
If anything, a controlling shareholder of a company defitely denies
an independency of the company of its controlling shareholder (i.e. the shareholder itself) in practice.
Otherwise, there is no meaning in acquiring the share.
And, concerning a listed company with its controlling shareholder, investors in the market trade the share
on the presupposition that it is dependent on the controlling shareholder.
In other words, concerning a listed company with its controlling shareholder, investors in the market trade the share
on the presupposition that both its contrrolling shareholder and its directors are trustworthy.

これはもはやトートロジーやその定義そのものに近いわけですが、会社の支配株主というのは会社を支配するのです。
それどころか、会社の支配株主というのは、実務上は会社の支配株主(すなわちその株主自身)からの独立性を
明確に否定するものなのです。
そうでなければ、株式を取得する意味がないのです。
そして、支配株主がいる上場企業に関して言えば、
市場の投資家はその上場企業は支配株主に従属しているということを前提に株式の取引を行うのです。
他の言い方をすると、支配株主がいる上場企業に関して言えば、
市場の投資家はその支配株主と取締役はどちらも信頼できるということを前提に株式の取引を行うのです。

 

It is not only a subject company but also a tender offerer itself
who is lacking in sufficient information for judging a tender offer, actually.

公開買付について判断をするための十分な情報を欠いているのは、対象会社だけではなく、実は公開買付者自身もなのです。

 

To peruse questions and opinions from a subject company, a tender offerer can sometimes want to quit a tender offer.

対象会社からの質問と意見を精査して、公開買付者が公開買付をやめたくなるということもあるでしょう。

 

On the traditional securities system before October, 1999,
a tender offerer used to be, frankly speaking, a "founder" of a subject company,
whereas, on the current securities system, a tender offerer is purely one of the "investors" in the market.
It is true that the securities system doesn't have to protect the former, but it must the latter.

1999年10月以前の伝統的な証券制度では、公開買付者というのは有り体に言えば対象会社の「創業者」だったのです。
しかし、現在の証券制度では、公開買付者というのは純粋に市場の「投資家」の1人なのです。
確かに対象会社の創業者を証券制度上保護する必要はありませんが、市場の投資家は証券制度上保護しなければならないのです。