2019年7月27日(土)



2019年7月27日(土)日本経済新聞
アスクル 株売り渡し請求 審議 対ヤフーで取締役会
(記事)





2019年7月26日
アスクル株式会社
ヤフー株式会社に対する当社株式の売渡請求取締役会の招集と本日の一部報道について
ttps://pdf.irpocket.com/C2678/GDpy/DkzM/Pc0K.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)




 

2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計221日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜2019年4月30日(火))
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

各コメントの要約付きの過去のリンク その2(2019年5月1日(水)〜)
http://citizen2.nobody.jp/html/201905/PastLinksWithASummaryOfEachComment2.html

 

 


アスクル社長、ヤフーに売り渡し請求権行使の構え−資産査定開始

ソフトバンクグループ傘下のヤフーとの資本提携関係解消のため、アスクルはヤフーに対し株式の売り渡し請求権を行使する
考えだ。岩田彰一郎社長(68)がインタビューで明らかにした。
  岩田社長はブルームバーグの取材に応じ、「売り渡し請求権を行使したい」と明言。現在、売り渡し先候補である
「ホワイトナイト」4社程度と最終交渉中で、デューデリジェンス(資産の適正評価)の手続きに入ったことを明らかにした。
  アスクルは26日夕、ヤフーへの売り渡し請求について審議し、決議するため、8月1日午後に取締役会を招集すると発表した。
同社によると、提携契約の違反が明らかであるなど一定の条件を満たせば、売り渡し請求権を行使できる。
  岩田社長は、アスクル株の売り渡し先として国内の事業会社と金融機関、国内ファンドや
海外のプライベート・エクイティ・ファンドなどが候補で、その中から2社程度を選ぶ意向を示した。
アスクルの時価総額は26日時点で約1500億円、ヤフー保有分は約700億円になる。
  アスクル株の45.1%を保有するヤフーは、収益性の早期回復などを理由に8月2日の株主総会に先立ち、
岩田社長ら4人の取締役再任に反対する議決権を行使した。アスクル側はこうした動きに加え、
ヤフーがインターネット通販サービス「LOHACO(ロハコ)」の譲渡を求め、独立性が損なわれたと主張。
資本業務提携の解消協議を申し入れてきたが、ヤフーは応じていない。
  ヤフーの広報担当者は、契約の内容については開示できないとした上で、現時点で売り渡し請求は受けていないため、
今後の対応についてはコメントできないと述べた。
  岩田社長は、ヤフーが株式売却には応じないとみており、その場合は司法の判断を仰ぐと述べた。
また、同社長ら4取締役の退任は不可避となり、新経営陣が訴訟を取り下げる可能性もあるが、「全てを白日の下でやる」と話し、
新経営陣が市場の監視の下、忖度のない経営を行う必要性を説いた。
  ヤフーが独立社外取締役の再任に反対票を投じたことについては、「驚いた。独立社外取は少数株主の代弁者。
それをいとも簡単に切ってしまうのはガバナンスの否定で、かなり衝撃的な行動だ」と述べた。
  アスクルは1993年にオフィス用品の通販サービス会社として創業し、2012年にヤフーと資本提携した。
従来は、ヤフーやその関係会社のソフトバンクGなどからの独立性は確保され、事業活動や経営判断に制約はないとしてきた。
  アスクル社員の間には動揺が広がっており、岩田社長は29日早朝に対話集会を開き、
これまでの経緯や現状、今後の計画を説明する。
  26日のアスクル株は午前の取引で一時前日比1.4%安まで下げたが、
報道を受けて3.4%高の2796円まで上昇し5月29日以来、約2カ月ぶりの高値を付けた。
(ブルームバーグ 2019年7月26日 12:58 JST 更新日時 2019年7月26日 17:43 JST)
ttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-07-26/PV2NE86K50Y001

 

 



【コメント】
アスクル株式会社が問題となっている自社株式の「売渡請求権」について、取締役会で審議と意思決定をする予定となっています。
アスクル株式会社は同日付けのブルームバーグの報道に対しても自社の見解をプレスリリース中に記載しているわけですが、
誤報であるとの指摘は一切なく、アスクル株式会社としてはブルームバーグの報道を概ね肯定しているようです。
さて、7月24日(水)付けでヤフーとプラスが議決権を既に行使(事前行使)したから書いているというわけでは全くないのですが、
たとえ取締役会開催日である8月1日(木)にアスクルが「売渡請求権」を行使したとしても
(そしてさらには同日8月1日(木)に即座に請求に応じてヤフーとプラスがアスクル株式を他社へ譲渡したとしても)、
8月2日(金)に開催されるアスクルの株主総会においてヤフーとプラスは議決権を行使できます。
なぜならば、8月2日(金)に開催されるアスクルの株主総会において議決権を行使できるのは、
8月2日(金)現在の株主ではなく「5月31日(金)」現在の株主だからです。
ヤフーとしては、アスクル株式を近日中にどうしても誰かに売り渡さなければならないとなりますと、
極端なことを言えば、「あとは野となれ山となれ」("After us the deluge.")という心境になり、
アスクルの役員選任議案の全て(候補者10名全員)に反対票を投じる、という事態も考えられるように思います。
この場合、定時株主総会終結の時をもってアスクルから取締役が1名もいなくなる、という事態になってしまうわけですが、
極端な話になりますが、ヤフーとしてはそのようなこともしようと思えばできるといえばできるわけです。
もしくは、ヤフーとしては、アスクルの役員選任議案の全て(候補者10名全員)に反対票を投じる用意がある旨表明することを
アスクルその他に対する"bluff"(はったり)として使うこともできるわけです。
「アスクルの役員選任議案の全て(候補者10名全員)に反対票を投じてしまうのも何ですので、契約書にある『売渡請求条項』
をこの際削除することにしませんか?」、とヤフーがアスクルに対し話を持ちかける、という手法もあると言えばあるわけです。
アスクルとしては、そのようなことをされると事業運営を全く行えない状態に陥ってしまいます(会社を清算するしかない)から、
今後ともヤフーとの資本・業務提携提携を継続する方が株主全体の利益に適う、という判断をせざるを得ないわけです。
ただ、私がこの提案を通じて言いたいのは、ヤフーは実際に上記のような"bluff"(はったり)をかけるべきだということではなく、
資本・業務提携を始めとする他社との協働というのは「信頼関係」に尽きる、ということなのです。
結局のところ、「信頼関係」がなくなった時点で、どちらから言うともなく協働はやめるべきなのです。
有事の際のことを鑑みて、両社の協働に関する契約には「売渡請求条項」を盛り込むことが実務上多いようですが、
実際には有事が起こった時点で、協働は解消するべきなのです(そして現実に双方が協働の解消を望むはずです)。
資本・業務提携において、相手方の株式の少数割合のみを保有している場合は、「売渡請求条項」その他の約束事がなかろうと、
「信頼関係」がなくなった場合は、できる限り速やかに保有株式を売却するようにするべきなのです(双方がそれを望むはずです)。
また、相手方の株式の過半数を保有している場合は、速やかに自社の意に沿う取締役を選任するようにするべきなのです。
「会社の株式の過半数を保有しているが取締役人事(選任議案)には口は出さない。」というのは矛盾であるようすら私は感じます。
一言で言えば、「支配株主がいるのに会社の独立性について議論をしている」ということ自体が、実は始めから矛盾しているのです。

Which situation does Askul wish for,
a situation that Yahoo doesn't own the Askul shares or a situation that some company else owns them?

アスクルが望んでいるのはどちらの状態なのですか?
ヤフーがアスクル株式を所有していない状態なのですか、
それとも、ヤフー以外のある会社がアスクル株式を所有している状態なのですか?

One idea is that Yahoo will bluff Askul into giving up exercising a right to make a demand for a sale of the shares.

1つの案は、ヤフーはアスクルにはったりをかけて株式の売渡請求権を行使することを諦めさせる、というものです。