2019年7月19日(金)



2019年7月19日(金)日本経済新聞
アスクルに社長派遣せず ヤフー、独立性に配慮
ヤフーに株売り渡し請求 アスクル社長「検討する」
(記事)





2019年7月18日
ヤフー株式会社
アスクル株式会社の本日(2019年7月18日)開催の記者会見について
ttps://file.swcms.net/file/sw4689/ja/ir/news/auto_20190718473320/pdfFile.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)





2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計213日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜2019年4月30日(火))
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

各コメントの要約付きの過去のリンク その2(2019年5月1日(水)〜)
http://citizen2.nobody.jp/html/201905/PastLinksWithASummaryOfEachComment2.html

 



【コメント】
今日の日本経済新聞にもアスクルとヤフーの事例についての記事が載っていましたので紹介します。
「株式売り渡し条項」の詳細については今日紹介している記事にも書かれてはいないのですが、一言だけ次のように書かれています。

>アスクル側によると、資本・業務提携するヤフーとの契約のなかに著しい違反があった場合は
>株式の売り渡しを請求できる条項が盛り込まれているという。

仮に、「ヤフーはアスクル社に断りなく他社にアスクル株式を譲渡してはならない。」という条項が盛り込まれていないならば、
ヤフーはプラスにアスクル株式を譲渡できる、という考え方になるのではないだろうかと思いました。

 

 



2019年5月14日(火)日本経済新聞
中小「経営者保証」見直し 事業承継に伴う不安軽減
(記事)




 

【コメント】
「経営者の個人保証がないならば円滑な事業承継につながるはずだ。」という内容になりますが、
記事の冒頭と重要な部分を引用します。

>中小企業が持つ借金の返済を経営者が個人で背負う「個人保証」を見直す動きが出ている。
>後継者が借金への不安を持ち、事業を引き継ぐのをためらう要因になるためだ。

>国は指針の整備などで、長年の慣行を崩そうを動き始めた。

このような論調(経営者による個人保証の見直し)の記事は、日本経済新聞に毎年1年に1回以上載っているように思います。
しかし、改めてこの点について考えてみますと、かつては商法上は取締役は当然に会社の債務の連帯債務者であったわけです。
経営者による個人保証は、慣行ではなく、商法上の義務であったわけです。
会社に債務が発生した原因は取締役の業務執行にあるわけですから、債権者の立場から見ると、
取締役が会社の債務の連帯債務者であるのは当たり前だ、と言いたくなるわけです。
この記事を債権者の立場から見ると、「会社の債務から個人保証を外すという考え方などない。」、と言いたくなるはずです。
このような論調の記事は、商法上取締役が会社の債務の連帯債務者ではなくなって以降、書かれ始めたに過ぎないのです。
かつては、2代目が親父さんの会社を継ぐ時は、当然に自分自身が会社の債務の連帯債務者になることを前提としていたのです。
場面を頭に思い浮かべ考えてみたのですが、「会社の債務に僕の個人保証を付けなくてよいなら会社を継ぎたいんだけど。」
とお父さんに言う息子さんは、その後本当にちゃんとした経営をするでしょうか。
そう言っている時点で、既に何か無責任な感じがするな、と私は思いました。
本人に悪気は一切ないとしても、「僕は会社を潰してしまうかもしれないけど」と言っているようにも聞こえるわけです。
債権者もきっと同じ気持ちでしょう。
本当に債権者に対し会社の債務を履行する経営者は、信頼の証として、会社の債務に始めから個人保証を付けるはずです。
ところで、現在の会社制度上は、会社の債務に経営者の個人保証は付けなくてもよい、ということになっています。
現在の会社制度上は、債権者がどのような条件で会社と取引を行うのかは当事者間で自由に決められる、という言い方ができる
わけですが、かつては商法上は取締役は当然に会社の債務の連帯債務者であった理由・目的は専ら債権者保護であった
ことを鑑みますと、極端なことを言えば、その当時の商法の規定であっても債権者は連帯債務者が負っている債務を免除することは
実務上は可能であった、という言い方はできる(連帯債務者に会社債務の履行を求めないことは債権者の自由だった)わけです。

 


ただ、連帯保証人が債務免除を受ける場合、所得税法上は話は簡単ではなく、
債務の免除を受けた連帯債務者には債務免除益(益金)が生じることになります。
「債務の一体性」(連帯債務者の債務は主たる債務者の債務そのものである)がその課税の理由です。
逆に、保証人が債務の免除を受けても、債務の免除を受けた保証人には債務免除益(益金)が生じません。
主たる債務者の債務と保証人の債務は別だからです。
保証人が債務の免除を受ける時、保証人と債権者は新たな契約を締結する、という考え方に概念的にはなるわけです。
保証人や連帯保証人が債務免除を受けるという場合、英語・日本語共に私の造語になりますが、
保証人と債権者との間の契約は"subsequent contract"(「後発契約」)というイメージであり、
連帯保証人と債権者との間の契約は"permanent contract"(「常置契約」)というイメージになります。
端的に言えば、保証人と債権者との間の契約は変更ができるのですが、連帯保証人と債権者との間の契約は変更ができないのです。
"subsequent"の語源はラテン語で「下に続く」という意味であり、
"permanent"の語源はラテン語で「最後まで残る」という意味であると辞書に載っています。
保証人が負う債務は"subsequent"というイメージであり、連帯保証人が負う債務は"permanent"というイメージなのです。
また、"permanent"とよく似た意味合いの言葉に"everlasting"(永久に続く)という言葉があります。
"everlasting"という言葉は"ever"+"lasting"であるわけですが、この"last"という言葉の語源は
古語英語で「(足跡に)従う」という意味であると辞書に載っています。
債務免除の文脈に即して言えば、連帯債務者が負う債務は"everlasting"(「当初の取り決めに終わりまで従う」)である、
という言い方ができるように思いました。
以上のように、保証人が負う債務と連帯保証人が負う債務は、本質的に異なるのです。
上記の議論を図に描いてみましたので参考にして下さい↓。
債務者は法人であり債務不履行を起こしたので清算をすることになったのだが、
債務者には保証人(自然人)や連帯保証人(自然人)がいた、という状況です。
債権者は、保証人(自然人)や連帯保証人(自然人)に対し債務の履行を求めずに債務の免除を行うことにしたのだが、
その際の保証人(自然人)や連帯保証人(自然人)の課税関係について図を描きました。
結論を一言で言えば、
「債務免除に伴い、保証人には債務免除益(益金)は発生しないが連帯保証人には債務免除益(益金)が発生する。」
となります。


「債務免除を受けた時の保証人と連帯保証人の課税関係」

 

 


Personal insurance by a president.

社長による個人保証

 

Taxation relationship of a guarantor and a joint and several guarantor
in case respective persons receive a debt waiver.

債務免除を受けた時の保証人と連帯保証人の課税関係

 

A contract between an obligee and a guarantor is renewable,
whereas a contract between an obligee and a joint and several guarantor is everlasting.

債権者と保証人との間の契約は新しいのと取り替えることができるのですが、
債権者と連帯保証人との間の契約は最後まで損なわれないのです。

 

When it comes to a debt waiver,
a contract between an obligee and a guarantor becomes another contract,
whereas a contract between an obligee and a joint and several guarantor remains the original contract.

話が債務免除ということになりますと、
債権者と保証人との間の契約は別の契約ということになる一方、
債権者と連帯保証人との間の契約は原契約のままなのです。

 

What are taxation relationships of a guarantor and a joint and several guarantor respectively
in case an obligee manifests his intention to release not an obligation to an obligor himself
but that to the guarantor or the joint and several guarantor?

債権者が債務者自身に対してではなくその保証人やその連帯保証人に対して債務を免除する意思を表示した場合における
保証人と連帯保証人ぞれぞれの課税関係はどうなりますか?

 



A guarantor is secondary in the original transaction and his obligation is the one between an obligee and him himself,
whereas a joint and several guarantor is primary in the original transaction
and his obligation is the one between an obligee and the principal obligor.
In other words, a joint and several guarantor succeeds to the original contract as it is,
whereas a guarantor enters into a new contract with an ogligee in a sense.
An obligee doesn't enter into a new contract with a joint and several guarantor  at all,
but an obligee can naturally claim on a guarantor
that the guarantor should perform the same obligation as the original contract.
Conceptually speaking, there exists only one contract in a joint and several guarantee,
whereas there exist two or more than two contracts in a guaratee.
In conclusion, in case an obligee manifests his intention to release the orginal obligation to a guarantor,
the guarantor doesn't have any obligations at all from the beginning and therefore
the guarantor doesn't receive a debt waiver from the obilgee (i.e. it is a non-taxable transaction to the guarantor),
whereas, in case an obligee manifests his intention to release the orginal obligation to a joint and several guarantor,
the joint and several guarantor himself gets exempted from his own obligation and therefore
an income tax gets levied on a gain on a debt waiver against the joint and several guarantor
(i.e. it is a taxable transaction to the joint and several guarantor).

保証人というのは原取引において派生的なものであり
保証人の債権債務関係は債権者と保証人本人との間の債権債務関係である一方、
連帯保証人というのは原取引において第一義的なものであり
連帯保証人の債権債務関係は債権者と主たる債務者との間の債権債務関係であるのです。
他の言い方をすると、連帯保証人は原契約をそのまま承継するのに対し、
保証人はある意味債権者と新しい契約を締結するのです。
債権者は連帯保証人と新しい契約を締結したりは決してしないわけですが、
債権者は原契約と同じ債務を履行するよう保証人に請求することが当然にできます。
概念的に言えば、連帯保証にはただ1つの契約しか存在しませんが、保証には2つもしくは2つ以上の契約が存在するのです。
結論としましては、債権者が保証人に対して原債務を免除する意思を表示した場合は、
保証人は最初から何らの債務も負っていないということになり、したがって保証人は債権者から債務の免除を受けてはない
(すなわち、保証人にとって当該取引は非課税取引です)ということになります。
一方、債権者が連帯保証人に対して原債務を免除する意思を表示した場合は、
連帯保証人本人が自分自身の債務の免除を受けるということになり、したがって連帯保証人に対しては
債務免除益に所得税が課される(すなわち、連帯保証人にとって当該取引は課税取引です)ということになります。