2019年7月18日(木)


2019年7月18日(木)日本経済新聞
アスクル社長再任に反対 通販巡り対立 ヤフー、提携解消拒否 「資本の力」前面
(記事)



2019年7月18日(木)日本経済新聞
ヤフー、EC挽回へ強硬策 アスクル社長再任に反対 「ロハコ」テコ入れ急務
「独立性守る契約 反故に」 アスクルの岩田社長
(記事)



鬼門の個人向けでヤフーと対立 アスクルに明日は来るか
(日経ビジネス 2019年7月18日)
ttps://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/071800549/

 

2019年7月18日
ヤフー株式会社
アスクル株式会社の本日(2019年7月18日)開催の記者会見について
ttps://about.yahoo.co.jp/pr/release/2019/07/18b/

(本文のキャプチャー画像)





2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計212日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜2019年4月30日(火))
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

各コメントの要約付きの過去のリンク その2(2019年5月1日(水)〜)
http://citizen2.nobody.jp/html/201905/PastLinksWithASummaryOfEachComment2.html

 

 



【コメント】
今日は、アスクルの事例の続報を紹介しながら、昨日のコメントに一言だけ追記をしたいと思います。
まず、「プラス株式会社とヤフー株式会社は証券制度上共同保有者に該当する。」という点についてですが、
日本の金融商品取引法の条文の字面だけを読みますと、プラス株式会社とヤフー株式会社は共同保有者に該当しないように
思えるかもしれませんが、「市場の投資家からは両社はどのような間柄であるように見えるか?」という観点から
考察を行いますと、「プラス株式会社とヤフー株式会社は証券制度上共同保有者に該当する。」という解釈になります。
どの国であるのかまでは覚えていませんが、欧米圏のある国では、まさにこのたびの事例のように議決権行使方針について
一定の「公表」がなされた場合は、両社は共同保有者に該当する、という証券制度に実際になっているようです。
日本の金融商品取引法の規定では(文言に照らすと)、プラス株式会社とヤフー株式会社を共同保有者であると取り扱うのは
実務上は難しい部分があると思いますが、仮に同じような状況であればプラス株式会社とヤフー株式会社は共同保有者である
と見なされる国(証券制度)が実際にある、ということは知っておいてよいと思います。
さて、本日、渦中のアスクルの社長が自社と自分の正当性を主張するために記者会見を開いたとのことです。
今日紹介している本日付の日本経済新聞と記者会見に関する記事を読んで驚いたのですが、
両社で締結した契約に基づき一定の条件を満たした場合アスクルはヤフーに株式の売渡請求権を行使できる、とのことです。
私は昨日、紹介したプレスリリースは十分に読んでいなかった(売渡請求権など本当にあるのか、と最初は思った)のですが、
今日改めてプレスリリースを読みますと、アスクル株式会社から発表されているプレスリリース
「ヤフー株式会社からの社長退陣要求と、アスクルからの提携解消協議申入れのお知らせ」には確かに少しだけ言及がありました。
この場合の売渡請求権は、会社法第百七十九条に規定する株式売渡請求とは異なっており、当事者間で合意した任意の売渡請求
という位置付けであり、一般に「株式売り渡し条項」と呼ばれているようです。
ヤフーは具体的にどのような場合にアスクル株式を売り渡さなければならないのかについては、
本日付の日本経済新聞の記事や記者会見のネット上の記事を読むだけでは分からないのですが、
アスクルは今後、早急に検討を進め、8月2日の定時株主総会までに行使するか否かを決める方針であるとのことです。
ヤフー株式会社は、アスクルが請求し得る「アスクル株式の譲渡」について、本日発表したプレスリリースの中で
「当社は、アスクルの株式を譲渡する予定はありませんし、アスクルから売渡請求も受けていません。」と返答しています。
アスクルとヤフーとの間で締結されている「株式売り渡し条項」についてなのですが、
現在の両社の状況を鑑みて「何か関連する論点はないだろうか?」と頭の中であれこれ策を考えてみたのですが、
私はふと「ヤフーが所有しているアスクル株式をプラスに譲渡する。」としたらどうなるだろうかと考えてみました。
「プラスにはヤフーから譲り受けたアスクル株式をアスクルに譲渡する義務はないはずだ。」と私は思いました。
プラスは公表している通り「ヤフーの考えに賛同」する立場であるわけですから、アスクル株式の譲り受けを快諾するはずです。
この場合は舞台が対象会社ではなく株主である(対応策を講じるのが対象会社ではなく株主の側となっている)わけですが、
変則的な「焦土作戦」("Scorched-earth defense measure")と言いますか、変則的な「ホワイトナイト」("white knight")
と言いますか、ヤフーとプラスがアスクルの社長再任に反対したいのであれば、そのような方策が考えられると思いました。
最初に言及した欧米圏のある国の証券制度においても、「株式売り渡し条項」の存在までは考慮はしていないでしょう。


It is true that Yahoo and Plus are a joint holder on the securities system,
but Plus doesn't have an obligation to sell its own Asukul share.
In principle, a contract between Askul and Yahoo is not applied to a joint holder of Yahoo.

確かにヤフーとプラスは証券制度上の共同保有者ですが、プラスには自社自身が所有しているアスクル株式を売却する
義務はありません。
原則としては、アスクルとヤフーとの間の契約は、ヤフーの共同保有者には適用されないのです。