2019年6月30日(日)


2019年6月8日(土)日本経済新聞
中国勢、制裁避け東南アへ ベトナム投資6倍弱 タイ2倍 米関税逃れる拠点に
上場20社超、生産移転へ 揺らぐ「世界の工場」 雇用に影響も
(記事)



2019年6月6日(木)日本経済新聞
ファーウェイ規制リストに 民間団体 日本企業の輸出安全懸念
(記事)



2019年6月6日(木)日本経済新聞
シャープ生産移管 パソコンの一部、中国から 米関税にらみ
(記事)





2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計194日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜2019年4月30日(火))
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

各コメントの要約付きの過去のリンク その2(2019年5月1日(水)〜)
http://citizen2.nobody.jp/html/201905/PastLinksWithASummaryOfEachComment2.html

 

 


【コメント】
関税に関連する記事を3本紹介し、昨日のコメントの追記をしたいと思います。
昨日のコメントでは関税や貨幣の位置付け(貨幣は相手方が欲しいと思う物を共通化する手段だ、と)について書いたわけですが、
一連の議論の中で「関税というだけであれば貿易に影響はないという考え方もある。」と書きました。
また、米国の対中関税政策に対する対応策として民間企業側でできることとして、次のように書きました。

>サミットの前の話ですが、アップルは中国への生産集中を回避するよう取引先に検討を要請した、とのことですが、
>その報道を見て、アップルは対中関税政策を見直すようロビー活動をするために先にワシントンに行くべきだと私は思いました。

そして、議論の最後の方では、関税以外の貿易制裁に関して「輸入割当と輸入制限は極端ですので」と書きました。
これらの点について追記をしたいのですが、貿易制裁に関しては、理論的には次のようなことが言えると私は考えます。

○関税              → 価格に左右されない物品の産出に力を注ぐべき(企業努力・自助努力で対応可能な要因であるはずだ)
○輸入割当と輸入制限 → ロビー活動で対応をするべき

関税というのは、「競合他社が現れ類似品を販売し始めた」という状態を頭に思い浮かべてみれば、自助努力の範囲内の要因だ、
ということが分かると思います(その場合、そのままでは利幅を削って販売価格を引き下げるという対応を強いられるはずです)。
関税の結果、価格転嫁を通じて自社製品の販売価格が上昇すること(売上数量の減少が見込まれること)が不当であるならば、
競合他社が現れた結果、自社製品の販売価格を引き下げざるを得ないことや売上数量が減少することも不当だということなります。
中国のファーウェイや日本のシャープは、自社流通網(輸出入を専門に行う子会社等、「トヨタ自動車販売」の国際版のイメージ)も
一定度自社グループ内に保有しているのかもしれませんが、その本質(中核企業)はどちらもあくまで「製造業者」です。
つまり、中国のファーウェイや日本のシャープ(その他自社製品を海外に輸出し販売している製造業者)にとっての関税は、
酒類の製造業者にとっての酒税やたばこの製造業者にとってのたばこ税と「経営上のインパクト」としては全く同じなのです。
税法上は確かに、酒税は酒類の製造業者が納付し負担し、たばこ税はたばこの製造業者が納付し負担をしているわけですが、
酒税もたばこ税も、結局のところは価格転嫁を通じて、消費者が負担している(最終価格に含まれる)側面があるわけです。
同様に、税法上は確かに、関税は輸出先相手国の輸入業者が納付をし負担をしているわけですが、
関税は、結局のところは価格転嫁を通じて、現地の消費者が負担している(現地での最終価格に含まれる)側面があるわけです。
酒税とたばこ税は納税義務者と租税負担者とが同一であるという点において税法上は直接税に分類できると言えるわけですが、
関税は製造業者自身は税法上は納税義務者でも租税負担者でもない、という違いがあります。
しかし、「経営上のインパクト」(消費者から見た場合の購入価格)としては、関税は酒税やたばこ税と全く同じなのです。
酒税やたばこ税に文句を言っている酒類の製造業者やたばこの製造業者はいない、ということを考えてみると、
自社製品を海外に輸出し販売している製造業者は関税に文句を言う資格はない、という言い方ができるわけです。
関税と比較し、輸入割当と輸入制限では、販売数量そのものに直接的に規制が課されていますので、経営努力を超えているのです。
酒類の製造数量・販売数量やたばこの製造数量・販売数量に、法律上規制が課されているでしょうか。
単刀直入に言えば、経営上は、「販売数量そのものに直接的に規制を課するのは不当である。」、と言い方はできると思います。
それで私は、輸入割当と輸入制限に関しては、ロビー活動で対応をするべきだ、と考えるわけです。
輸入割当と輸入制限は、純粋に政治の問題だからです。
まあ、国際的な場面では、結局のところは、関税も政治の問題かもしれませんが。
それから、経営戦略や企業経営(生産者や商人)から見た視点ということになりますが、昨日のトランプ大統領の表明を聞きますと、
政策の転換というのはある意味簡単である(壇上の一言で済む)一方、それと比較すると経営戦略の転換は著しく難しいと思います。
生産拠点の他国への移転というのは、経営者にとって一大決心である(会社にとっての実務上の負担が著しく大きい)わけです。
「苛政は虎よりも猛し」と言いますが、経営方針というのは課税方針と比較するとはるかに"tight"(綿密だ)なものなのです。