2019年6月20日(木)



2019年6月19日(水)日本経済新聞
インド航空大手、破産へ ジェット、株価は急落 LCCと競争厳しく
(記事)




 

「ゼミナール 金融商品取引法」 大崎貞和 宍戸善一 著 (日本経済新聞出版社)

第2章 上場制度と発行開示
2. 取引所の上場制度
(2) 上場廃止
上場廃止の手続き
経営破綻以外の理由による上場廃止
(3) 上場企業監理
「71ページ」 

「72〜73ページ」 

 

 


有価証券上場規程(東京証券取引所)(一部抜粋)

第601条(上場内国会社の上場廃止基準)
 本則市場の上場内国株券等が次の各号のいずれかに該当する場合には、その上場を廃止するものとする。
(6) 銀行取引の停止
 上場会社が発行した手形等が不渡りとなり銀行取引が停止された場合又は停止されることが確実となった場合
(7) 破産手続、再生手続又は更生手続
 上場会社が法律の規定に基づく会社の破産手続、再生手続若しくは更生手続を必要とするに至った場合
又はこれに準ずる状態になった場合。
(8) 事業活動の停止
 上場会社が事業活動を停止した場合又はこれに準ずる状態になった場合
(12) 上場契約違反等
 上場会社が上場契約に関する重大な違反を行ったとして施行規則で定める場合
(20) その他
 前各号のほか、公益又は投資者保護のため、当取引所が当該銘柄の上場廃止を適当と認めた場合

 

 

2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計184日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜2019年4月30日(火))
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

各コメントの要約付きの過去のリンク その2(2019年5月1日(水)〜)
http://citizen2.nobody.jp/html/201905/PastLinksWithASummaryOfEachComment2.html

 

 



【コメント】
紹介している記事を読んで、破産手続きに入った後も証券取引所で株式の取引が行われるというのはおかしいなと思いました。
ただ、記事を読みますと、現地時間時点では、債権者(銀行団)が破産手続きを申し立てると発表した、というだけのようです。
理論的には、発行者に関する破産手続き開始の申し立てを裁判所が受理すると同時に、証券取引所は上場廃止の手続きを開始する、
という考え方になるのだと思います(つまり、債権者の意向・声明や申し立ての可能性だけでは上場廃止は開始されないわけです)。
仮に記事の事例が日本国内(東京証券取引所)の事例だとしますと、どの上場廃止基準に該当するだろうかと考えてみました。
単純に考えれば、「(6)銀行取引の停止」か「(7)破産手続、再生手続又は更生手続」か「(8)事業活動の停止」かの
いずれかもしくはこれらのうちの複数が上場廃止の理由に該当すると考えられるわけですが、
会計の観点からは、「(12)上場契約違反」に該当する、という考え方はできないだろうかと思いました。
すなわち、「発行者は事業継続を前提として作成された財務諸表が記載された有価証券報告書を提出するという上場契約を
証券取引所と締結しているにも関わらず、発行者は事業継続を前提とした財務諸表を作成できなくなった。」からという理由です。
市場の投資家は、「事業継続を前提として作成された財務諸表」を投資判断の根拠として株式投資を行うわけです。
支払不能等を契機とした清算手続きにおける清算価値(残余財産の分配金額)を算定するのが株式投資ではないわけです。
発行者は平常時(事業継続時)の財務諸表を作成できないとは、「発行者は投資判断の根拠を提供できない。」という意味です。
公認会計士も清算を前提とした財務諸表を監査することはできないわけです(清算を前提とした財務諸表は企業会計ではないのです)。
「開示されている財務諸表は事業継続を前提にしているのに発行者自身は現在清算を前提にしている。」、というのでは、
投資判断の根拠と発行者の実態が完全に乖離していると言わねばならないのです(発行者は財務諸表を作成できないが理由です)。


Financial statements are prepared on the presupposition that
a company will conitunue operating its businesses in the future.

財務諸表というのは、会社は今後も事業を継続するということを前提に作成されます。

In theory, a share gets delisted as soon as an issuer gets insolvent or enters into a bankruptcy procedure.
An insolvency of an issuer means a serious breach of a listing contract with a stock exchange
because one of the clauses of a listing contract is that an issuer must submit a securities report
in which financial statements are printed
which are prepared on the presupposition that the issuer will conitunue operating its businesses in the future.
Once an issuer gets insolvent or enters into a bankruptcy procedure,
it no longer gets able to prepare financial statements on the presupposition of its business continuation.
In other words, as soon as an issuer gets insolvent or enters into a bankruptcy procedure,
its financial statements get separated from its actual conditions (The reason is its "business continuation.").

理論的には、発行者が支払不能に陥ったり倒産手続きに入ると同時に株式は上場廃止になります。
発行者が倒産状態にあることは、証券取引所との上場契約に重大に違反していることを意味するのです。
なぜならば、上場契約の条項の1つは、発行者は今後も事業を継続するということを前提に作成された財務諸表が
記載された有価証券報告書を提出することだからです。
一旦発行者が支払不能に陥ったり倒産手続きに入ると、
発行者は事業継続を前提にした財務諸表を作成することはもはやできなくなるのです。
他の言い方をすると、発行者が支払不能に陥ったり倒産手続きに入ると同時に、
発行者の財務諸表は発行者の実態とは乖離してしまうのです(その理由は、発行者の「事業の継続」です)。