2019年6月16日(日)



2019年6月9日(日)日本経済新聞
REIT、初の「敵対的M&A」 カギ握る 当局の判断 総会開催で実現の公算/投信法の盲点巡り攻防
(記事)





「ゼミナール 金融商品取引法」 大崎貞和 宍戸善一 著 (日本経済新聞出版社)

第14章 規制の実効性確保 パブリック・エンフォースメントとプライベート・エンフォースメント
1. 公的機関によるパブリック・エンフォースメント
(4) 緊急差止命令
【コラム】差止命令をめぐる日米の違い
「368〜370ページ」 

 



金融商品取引法の条文

第百九十二条(裁判所の禁止又は停止命令)
裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、内閣総理大臣又は内閣総理大臣及び財務大臣の申立てにより、
当該各号に定める行為を行い、又は行おうとする者に対し、その行為の禁止又は停止を命ずることができる。

第一項第一号 緊急の必要があり、かつ、公益及び投資者保護のため必要かつ適当であるとき
この法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為

 


2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計180日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜2019年4月30日(火))
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

各コメントの要約付きの過去のリンク その2(2019年5月1日(水)〜)
http://citizen2.nobody.jp/html/201905/PastLinksWithASummaryOfEachComment2.html

 

 


【コメント】
今日紹介している2019年6月9日(日)付けの日本経済新聞の記事に書かれています事例(投資法人における投資主総会の招集請求)は、
「司法と行政の境界線というのは現実にはあいまいだ。」ということを理解する格好の事例だと思います。
株式会社では少数株主が株主総会の招集許可を求める場合は申立先は裁判所である一方、
投資法人では少数投資主が投資主総会の招集許可を求める場合は申立先は「内閣総理大臣」(窓口としては財務局)となっている、
という相違点があるわけですが、「投資信託及び投資法人に関する法律」(投信法)では、
市場の投資家の利益を保護する観点から、投資主総会を招集するべきか否かを判断するのは司法(裁判所)ではなく
行政(財務局)が最適であると考えている、ということを意味しているわけです。
つまり、投信法は行政機関もまた申し立てを受けて審理や決定をする機関であると定義している、ということです。
関連する論点になりますが、今日も金融商品取引法の教科書から「エンフォースメント」についての解説を紹介しています。
審理をしたり決定をしたり命令を発出するのが司法(裁判所)であれ行政(財務局)であれ、実効性の確保のためには、
法制度としては最後の最後は、「命令に従わない者に対して強制的に制裁を科すこと」が必要なのです。
所定の政府機関から発出された各種の命令に従わない者は、政府機関に対する侮辱罪に該当するものとして取り扱い、
比較的簡便な手続きで刑事制裁を科することができるという法制度を構築しなければならないのです。
昨日のコメントでは、裁判所の審理や決定では法執行ができない、という意味を込めて、次のように書きました。

>裁判所(純粋な審理機関)には法執行を行う手段がない

しかし、「裁判所侮辱罪(contempt of court)」が法制度にあれば結果的に裁判所も法執行ができる、ということになります。
繰り返しますが、審理をしたり決定をしたり命令を発出するのが司法(裁判所)であれ行政(財務局)であれ、
実効性の確保のためには、最後の最後は(違反者が最後まで決定事項に従わない場合は)、
懲役を中心とした刑事罰を違反者に科する(最後は刑法上の罰が待っている)、という法制度を構築しなければならないのです。

 

An administrative organ of a government in general should be
a judging organ as well as an administrative organ in a narrow sense.

政府の行政機関というのは全般に、狭義の行政機関であると同時に審理機関でもあるべきなのです。


It is not a judge of court but exclusively a commissioner of Financial Services Agency
who should issue an order against an offender.

違反者に対し命令を発出するのは、裁判所の裁判官ではなく専ら金融庁長官であるべきなのです。


An "enforcement" on the securities system means, when all is said and done, compulsorily inflicting a penal punishment
on an offender for, as it were, a crime "Contempt of Financial Services Agency."

証券制度における「法執行」というのは、最後の最後は、
言わば「金融庁侮辱罪」のかどで違反者に対し強制的に刑事制裁を科することを意味するのです。