2019年6月11日(火)


2019年3月1日(金)日本経済新聞 経済教室
鈴木 健嗣 一橋大学准教授
芹田 敏夫 青山学院大学教授

日本企業の株主還元策 投資・成長機会の逸失避けよ
投資家の注目狙いは危険

ポイント
○還元策の不要な企業が義務的に行う例
○ROE重視の風潮も自社株買いを後押し
○持ち合い解消する手段と認識する企業も
(記事)

 



「ゼミナール 金融商品取引法」 大崎貞和 宍戸善一 著 (日本経済新聞出版社)
第9章 金融商品取引法の適用範囲
1. 有価証券
【コラム】日本の資本市場における社債
「246〜247ページ」 

 

 



「ゼミナール 会社法入門」 岸田雅雄 著 (日本経済新聞出版社)
第4章 コーポレート・ファイナンス
T 会社法TODAY
6 社債によるファイナンス
社債と株式の比較
「337ページ」 

社債管理者の設置、社債管理者の権限、社債管理者の義務、社債管理者の責任
「338〜339ページ」 

「340〜341ページ」 

 

 

2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計174日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜2019年4月30日(火))
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

各コメントの要約付きの過去のリンク その2(2019年5月1日(水)〜)
http://citizen2.nobody.jp/html/201905/PastLinksWithASummaryOfEachComment2.html

 

 



【コメント】
今日は、2019年6月7日(金)と2019年6月8日(土)と2019年6月9日(日)と2019年6月10日(月)のコメントに一言だけ追記をします。
2019年3月1日(金)付けの日本経済新聞の記事(「経済教室」)を紹介し、また、
金融商品取引法の教科書と会社法の教科書から「社債」と「社債管理者」についての説明部分をスキャンして紹介しています。
紹介している記事は、日本企業が株主へ利益を還元する「ペイアウト(配当と自社株買い)」の規模が年々増加している、
という内容なのですが、執筆者2人は
「長期的な視点に立てば、ペイアウトするべき企業とすべきではない企業に分かれるはずである。」、との観点から、
全上場企業を対象に、ペイアウト政策に対する考え方や意識をサーベイ調査し、そしてその結果が記事には説明されています。
今日私は「証券市場から見た社債」という観点から社債について一言だけ書きたいのですが、
一言で言えば、「社債を発行している発行者は、投資家保護の観点から、証券制度様々な規制が課せられるべきである。」
と私は考えます。
社債を発行している状況下では、投資家保護の観点から、発行者には以下の証券規制が課せられるべきだと私は考えます。

@発行者は、社債を全て償還し終わるまで株主に配当を支払えない。
A発行者は、社債を全て償還し終わるまで自社株買いを行えない。
B発行者は、社債を全て償還し終わるまで支配株主の誕生や支配株主の変動を行えない。

以上3つの証券規制の目的は、社債の償還可能性を最大限高めるため(社債の債務不履行を最大限防止するため)です。
まず、1つ目と2つ目の理由は、発行者の現金保有量を最大限高めることが目的です。
この文脈での現金保有は、現在必要な投資や将来の成長機会のための現金保有では全くなく、償還のための現金保有です。
発行者は償還の日まで日々事業を継続するのはもちろんです(社債償還日に会社清算を行うわけでは全くない)が、
株主に利益を還元するということは社債権者の利益の保護のために禁止されるべきなのです。
成長機会の逸失は避けるようにするのはもちろんですが、少なくとも企業にとっては何らの成長機会でもない株主への利益還元は
社債を全て償還し終わるまで禁止されるべきなのです。
配当を支払ったり自社株買いを行うと会社の利益額や業績は増加する、ということは絶対にあり得ないのです。
次に、3つ目の理由は、発行者の業務執行者(取締役)が不穏当に変動することを避けることが目的です。
社債を引き受けた市場の投資家は、発行時の取締役の業務執行の手腕を信じて社債を引き受けたわけです。
仮にその後取締役が交代することがあろうとも、発行時の取締役が候補者として推薦した人物であれば、
どのような結果になろうとも(極端に言えば、債務不履行になろうとも)社債を引き受けた市場の投資家も納得することでしょう。
しかし、突然新たに支配株主が誕生するであったり既存の支配株主とは異なる別の人物が支配株主になる、
という事態が生じますと、事実上業務執行者(取締役)の刷新が行われるわけです。
支配株主の誕生も支配株主の変動も、ある意味既存株主(そのような事態が生じる前の株主)の意思であるという側面がある
(すなわち、既存株主は所有株式をその際売却するか保有し続けるかを選択できる)わけですが、
支配株主の誕生も支配株主の変動も、社債権者には全く関係がない(その際社債権者は何らの選択もできない)わけです。
別の言い方をすれば、既存株主は支配株主の誕生も支配株主の変動も自分達の意思で避けようと思えば避けられるわけですが、
社債権者は支配株主の誕生も支配株主の変動も自分達の意思では全く避けられない(影響を与えることが一切できない)のです。
さらに他の言い方をすれば、支配株主の誕生も支配株主の変動も既存株主の自己責任という部分があるわけですが、
支配株主の誕生も支配株主の変動も社債権者には何らの責任もないわけです。
支配株主の誕生の際も支配株主の変動の際も、社債権者は業務執行(業務執行能力)の変動の影響のみを一方的に被るのです。
支配株主の誕生にも支配株主の変動にも社債権者は一切口を出せない以上、投資家保護の観点から、
最大限安定的な業務執行が償還日まで行われるよう証券制度が取り計らうべき(その旨の証券規制を課するべき)なのです。
知己からの資金調達ではないわけです、不特定多数の投資家を保護するとはそういうことではないでしょうか。

 

 



In the securities market, interests of holders of corporate bonds should be protected more than those of shares.

証券市場においては、社債の保有者の利益は株式の保有者の利益よりも保護されるべきなのです。

 

In my personal opinion, under a situation that an issuer has issued its corporate bond to investors in the market,
it can't make a "payout" to its shareholders at all.

私個人の考えでは、発行者が市場の投資家に対して社債を発行している状況下では、
発行者は株主に対して「ペイアウト(配当と自社株買い)」を行うことが一切できないのです。

 

And, what is more, under such situation, both a birth of a new controlling shareholder
and a change of an existing controlling shareholder should be prohibited by the securities regulations.

そして、さらに言えば、そのような状況下では、
新しい支配株主が誕生することも既存の支配株主が変更になることも、証券規制によって禁止されるべきなのです。

 

General shareholders have elected directors little,
whereas holders of a corporate bond haven't elected directors at all.

一般株主は取締役をほとんど選任していないのですが、社債権者は取締役を全く選任していないのです。

 

In my personal opinion, just as a shareholder register must be concealed both from shareholders and from an issuer,
a bondholder register must be concealed both from bondholders and from an issuer too.

私の個人の考えでは、株主名簿は株主にも発行者にも秘密にしなければならないように、
社債権者名簿もまた社債権者にも発行者にも秘密にしなければならないのです。