2019年6月1日(土)



2019年6月1日(土)日本経済新聞
強すぎる創業者に批判 フェイスブックCEO 議決権6割握る 企業統治提案 全て否決 株主総会
外部の監視働かず 公的年金 種類株に反対姿勢
(記事)





You invested in the company's stock with your recognition that
the controlling shareholder had existed through its disclosure, didn't you?

ディスクロージャーを通じて支配株主が既に存在しているということを知った上で、
あなたはその会社の株式に投資をした、ということですよね。

 

 

2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計165日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜2019年4月30日(火))
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

各コメントの要約付きの過去のリンク その2(2019年5月1日(水)〜)
http://citizen2.nobody.jp/html/201905/PastLinksWithASummaryOfEachComment2.html

 

 



【コメント】
紹介している記事は、創業者を始めとする経営陣に強力な議決権を与える種類株式の発行に関する内容です。
記事には、2017年3月に上場した米スナップについても書かれているのですが、
米スナップは上場時に一般投資家には議決権ゼロの新株式を売り出し、創業者が議決権の9割を握る、
という株主構成となっているのですが、このことに伴う最も典型的な問題点として、記事には次のように書かれています。

>一般株主は議決権を持たず、業績が低迷しても株主総会で現経営陣を解任することはできない。

株主総会決議に関する会社法の規定によりその具体的割合は国によって異なっているわけですが、
例えば日本の会社法に即して言えば、支配株主(創業者等)が議決権を3分の2以上を保有している
(一般株主は議決権を3分の1以下しか保有していない)ことと
支配株主(創業者等)が議決権を100%保有している(一般株主は議決権を全く保有していない)ことは、
一般株主の立場からすると全く同じことだと言わねばなりません。
米スナップでは一般株主は議決権を全く持っていないため有事の際にも株主は株主総会で現経営陣を解任することはできない、
とだけ聞くと、企業統治の上で大きな問題だと感じてしまうわけですが、
例えば日本では、支配株主がいる上場企業では以前からその問題点は内在していたわけです。
市場の投資家は、「発行者には支配株主がいる。」ということを予め承知した上で、
その発行者の株式を購入する必要があったのです。
米スナップの問題点は、一般株主が保有しているのは無議決権株式だという点であるというよりも、
伝統的な見方からすると、支配株主がいることだという点であると言わねばならないのでしょう。
支配株主が多くの議決権を保有している手段が、普通株式を多数保有していることであろうが、
多議決権株式を保有していることであろうが、株主総会決議という意味では、市場の投資家から見るとどちらも同じなのです。
伝統的な見方からすると、米スナップの事例は決して新しい問題点ではない(むしろ当初から指摘されていた問題点)のです。
また、支配株主がいることの最も典型的な問題点の1つは、少数株主の利益を犠牲にした少数株主の締出しが行われ得ることです。
少数株主の締出しを行う法手続きを用意しなければよいと言ってしまえばそれまでのことなのですが、
少数株主の締出しを行う法手続きを所与のこととしますと、実務上は必然的に線引きが難しい問題が生じることになります。
また、少数株主の締出しを行う法手続きがない場合は、支配株主が少数株主の利益を害するということは起こり得ません。
なぜならば、少数株主の締出しを行う法手続きがない場合は、少数株主は純粋に自分の意思に基づき株式の売買を行うからです。
支配株主がいるにせよいないにせよ、1999年以前の伝統的な証券制度では、一般株主が議案の採決に影響を与えることは
ある意味想定されないことだった(どの株主構成であれ、株主総会では株主はただ追認するだけ)という言い方ができます。
一般株主にとっては議決権に意味はほとんどなく、議決権行使を度外視すれば、証券投資(有価証券の売買)という意味では、
支配株主が存在するもしくは新たに誕生したというだけでは、実は元来的には少数株主の利益は害されないのです。
さらに言えば、極端な言い方になりますが、たとえ発行者に支配株主がいることが市場の投資家には分からなくても、
証券投資(有価証券の売買)という意味では問題はない(一般株主にとって議決権に意味はないから)、という見方もあります。
つまり、たとえ発行者自身でさえ自社の株主名簿を閲覧することはできない(当然投資家も株主名簿は閲覧できない)としても、
証券投資(有価証券の売買)という意味では問題はない(投資家の利益は害されない)、という見方もできるように思います。
「あなたは株式を購入する時そして株主総会で議決権行使をする時、会社に支配株主がいることを知らなかったわけですが、
仮にあなたが会社に支配株主がいることを知っていたとしたら、あなたは株主総会で異なった議決権行使をしていましたか?」
と尋ねられた場合、そう尋ねられた株主は「いいえ、たとえその事実を知っていても、
私は株主総会で同じ議決権行使をしていたことでしょう。」と答えるように私は思います(つまり、支配株主の有無は関係ない)。
また、「株式の購入の際には会社に支配株主がいるか否かは開示されなければならない。」という考え方は正しいように思いますが、
理論上は支配株主がいるというだけでは少数株主の利益は害されないため、やはり支配株主の有無は関係ないという見方もできます。