2019年5月27日(日)



「ゼミナール 会社法入門」 岸田雅雄 著 (日本経済新聞出版社)
第3章 コーポレート・ガバナンス
T 会社法TODAY
2 経営を行う者
【コラム】社外取締役は機能するか
「192ページ」



 


2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計160日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜2019年4月30日(火))
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

各コメントの要約付きの過去のリンク その2(2019年5月1日(水)〜)
http://citizen2.nobody.jp/html/201905/PastLinksWithASummaryOfEachComment2.html

 

 


【コメント】
ここ数日間は、LIXILグループの新取締役人事に関する事例を題材にして、委任状争奪戦や取締役会について考察を行っていますが、
今日は、金融商品取引法ではなく会社法の教科書から「社外取締役」についてのコラムをスキャンして紹介しています。
今日も「社外取締役」と経営の監視・監督役について考察を行いたいと思います。
昨日は、非上場企業では株式の譲渡が行われず家族的経営が行われることが実務上非常に多いという点を踏まえ、
非上場企業では社外取締役の選任が論点となることは稀であると指摘をした上で、次のように書きました。

>非上場企業では「株主=取締役(社長)」という関係にあることが実務上非常に多いですので、
>非上場企業では「株主によるガバナンス機構が構造的に不要である。」(株主による経営のモニタリングがそもそも不要である)
>という言い方ができると思います(すなわち、取締役による業務執行が株主の利益に反するということが構造的にあり得ない)。

「『株主=取締役』であれば株主によるガバナンス機構はそもそも構造的に不要である。」という結論を起点にして、
「『株主=取締役』ではない場合(すなわち、取締役に委任が行われる場合)には経営の監視・監督役は必要か否か?」
という点について考察を行いました(つまり、昨日書きました関係を起点にして株主と取締役の関係を拡張して考察を深めました)。
「経営の監視・監督役は必要なのか否か?」という論点について考察を進める中で、私は次の図を描きました。

In various senses, a trust means to leave an execution to a trutee unqualifiedly.
(様々な意味において、委任とは執行を受任者に無条件で預けるという意味なのです。)

この議論において、「株主と取締役の関係」は大きく分けると4つに分類できる(合計4パターンがある)と私は思います。
私が描きました図を見ていただきたいのですが、経営の監視・監督役は必要なのは、「パターンC」のみという結論になります。
図中の「パターン@」から「パターンB」の場合は、純粋に委任の法理に基づけば、経営の監視・監督役は実は不要なのです。
なぜならば、それが委任だからです(委任とは本質的に任せることです)。
株主が自分で選任した取締役が信頼できないということならば、では監査役は信頼できるのか、という話になるわけです。
逆に、株主が皆非常に小規模な株主である場合(すなわち「パターンC」)にのみ、会社には経営の監視・監督役が必要となるのです。
なぜならば、その場合は取締役は実質的に委任者から選任されてはいないと見なされるからです。
より実務的に言えば、株主は実質的には取締役を選任してはいない(会社作成の取締役選任議案を株主総会で追認しただけである)、
だから、取締役の業務執行を監視・監督する機関を会社に別途設ける必要があるのです。
株主が皆非常に小規模な株主である場合(すなわち「パターンC」)は、実質的には株主は取締役を選任したとは言えないため、
株主の利益を保護するために、最大限適正な業務執行が行われるよう制度構築する必要があるわけです。
商法学者や有識者や立法者は唯一解に辿り着かなかったのか、それとも、理論上の絶対的な答えがそもそもないということなのか、
過去紆余曲折があったのですが(従前の規定に戻すという法改正があったのですが)、1974年の商法改正で、
監査役は会計監査のみならず取締役の業務執行を監査する権限も持つことになりました。
商法改正に伴い1974年に監査役が会計監査に加え取締役の業務執行を監査する権限をも持つことになった理由、
それは1974年に商法が「会社の株主は皆小規模な株主である(会社の株主は不特定多数である)。」ということを
法制度上の会社の基本形態(極端に言えば「前提」)とすることとしたからである、という言い方ができるように私は思うわけです。
1974年の商法改正は、実は上場企業(証券制度)を念頭に置いたものであった、という見方ができるように私は思います。
1974年の商法改正は、証券取引法との整合性のようなことに重点を置いたものであった、という見方ができるように私は思います。
「1999年以前の伝統的な証券制度は、実は1974年に始まったものであった。」、
という推測ができるのかもしれないなと思いました(監査役の職務・職権の強化(商法改正)を見てそう推測しました。)。
結論を再度書きますと、図中の「パターン@」から「パターンB」の場合は、「株主と取締役との関係性が明らか。」なので、
経営の監視・監督役は不要なのです(逆に、「パターンC」の場合は、株主は実質的に取締役を選任してはいないのです)。

 

 


Directors including Outside Directors are a "person who executes operations"
and Cmpany Auditors are a "person who supervises operations."

社外取締役を含む取締役は「経営を行う者」であり、監査役は「経営を監視する者」なのです。

 

In theory, what you call a "supervisor" role over an execution of operations made by directors
is considered to be an essential organ of a company
only when directors are regarded as virtually not having been elected by trusters
or only when shareholders are all a very small one (i.e. only when all shareholders are unspedified and many).

理論的には、取締役が行う業務執行に対するいわゆる「監督」役が会社に必要不可欠な機関であると考えられるのは、
取締役は実質的に委任者から選任されてはいないと見なされる場合のみ、
すなわち、株主は皆非常に小規模な株主である場合のみ(つまり、全ての株主が不特定多数である場合のみ)なのです。