2019年5月26日(日)


「ゼミナール 金融商品取引法」 大崎貞和 宍戸善一 著 (日本経済新聞出版社)

第1章 コーポレート・ガバナンス
3. 間接的モニタリング
(1)取締役会と社外取締役の役割
【コラム】社外取締役は役に立たないか?
(2)委員会設置会社
「44〜45ページ」 

「46〜47ページ」 

「48〜49ページ」 

 



It is sufficient in practice that Company Auditors say to Directors,
"We would like to witness the details there when you make a resolution of a board of directors."

「取締役会決議を取る時には立ち合わせていただきますので。」
と監査役が取締役に言うだけでも実務上は十分なのです。

 

 


2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計159日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜2019年4月30日(火))
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

各コメントの要約付きの過去のリンク その2(2019年5月1日(水)〜)
http://citizen2.nobody.jp/html/201905/PastLinksWithASummaryOfEachComment2.html

 

 



【コメント】
ここ数日間は、LIXILグループの新取締役人事に関する事例を題材にして、委任状争奪戦や取締役会について考察を行っていますが、
今日は、金融商品取引法の教科書から「社外取締役」についての説明部分をスキャンして紹介しています。
非上場企業では株式の譲渡が行われず家族的経営が行われることが実務上非常に多いという点を踏まえますと、
「社外取締役」に関連する議論というのは、会社法・会社法制関連ではなく、どちらかと言うと証券制度に関連する議論である、
という言い方ができると思いますので、金融商品取引法からは「社外取締役」はどう見えるだろうかと思いました。
非上場企業では株式の譲渡が行われず家族的経営が行われることが実務上非常に多いがゆえに、
非上場企業では社外取締役の選任が論点となることは稀であると思います。
他の言い方をすれば、非上場企業では「株主=取締役(社長)」という関係にあることが実務上非常に多いですので、
非上場企業では「株主によるガバナンス機構が構造的に不要である。」(株主による経営のモニタリングがそもそも不要である)
という言い方ができると思います(すなわち、取締役による業務執行が株主の利益に反するということが構造的にあり得ない)。
つまり、「社外取締役」に関連する議論というのは、上場企業(証券制度)に特有の議論なのだと思います。
それで、「社外取締役」や取締役会についてなのですが、率直に言えば「社外取締役」というのは機能しないように思えます。
スキャンしている教科書の45ページに書かれていますように、監査役の職務・職権を拡充する方が理論的かつ現実的だと思います。
監査役が取締役会での議論に出席しその議事録を保管するようにするというだけでも、取締役に対する効果は現実に大きいはずです。
さらに言えば、2019年5月21日(火)のコメントで書きましたように、取締役会というのは、業務執行ということを鑑みれば、
有機的に統一されていなければならない(取締役会に経営上の統一性・業務執行の一貫性がなければならない)わけです。
そのことを鑑みますと、従事する人材の多様性("diversity")が求められるのは、取締役ではなく、監査役だと私は思います。
会社の業務執行は首尾一貫していなければなりませんが、様々な角度・観点からその監督を行うことは実効性が高いと思います。
監査役に求められるのは、業務執行や業界知識や経営上の助言ではなく、いい意味でのプレッシャーを取締役にかけることなのです。


Constituents of a board of directors are indivisable or can't be discriminated between them.
Even if constituents of a board of directors discuss various management matters of a company among them
and the board is thrown into confusion, once the board adopts a resolution after the discussion,
each constituent must obey the resolution as if no constituent had dissented the resolution.
In other words, once the board adopts a resolution after the discussion,
they all are regarded as having no difference of an opinion about the operation of a company which have been resolved.
Therefore, to put it simply, even if an outside director asserts that he himself definitely voted
against the resolution at the board, there aren't any meanings in that assertion.
Frankly speaking, the purpose of a resolution of a board of directors is that
a company narrows down various opinions among the directors to only one opinion (In short, it unifies its opinion.).

取締役会の構成員は、分割することができない、すなわち、構成員間で差別を設けることはできないのです。
たとえ取締役会の構成員が会社の様々な経営問題について皆で議論をし取締役会が紛糾しようとも、
議論を経た後に一旦取締役会が決議を採決したならば、
その決議に意義を唱える構成員はいなかったものとして構成員1人1人はその決議に従わなければならないのです。
他の言い方をすれば、議論を経た後に一旦取締役会が決議を採決したならば、
取締役会の構成員は皆、決議がなされた会社の業務については意見の相違はないものと見なされるのです。
したがって、簡単に言いますと、たとえ社外取締役が「取締役会では私自身はその議案に明確に反対の投票をしました。」
と強く主張をしても、その主張には一切意味はないのです。
率直に言えば、取締役会決議の目的というのは、
取締役間の様々な意見をただ1つの意見に集約すること(一言で言えば、会社が自社の意見を1つにすること)なのです。