2019年5月24日(金)



2019年5月24日(金)日本経済新聞
LIXIL取締役候補者 瀬戸氏「株主提案、支持を」 重複の2人「会社案、同意せず」
(記事)





「ゼミナール 金融商品取引法」 大崎貞和 宍戸善一 著 (日本経済新聞出版社)

第5章 機関投資家と議決権行使
4. 委任状勧誘をめぐる規制
「166〜167ページ」

>金商法は、政令の定めに反して、上場企業の株式につき自己または第三者に議決権の行使を代理させることを
>勧誘してはならないと定めています(第194条)。

 

On the current prescriptions, a shareholder can exercise his voting right in four ways in total.

現行の規定では、株主は議決権を行使する方法が全部で4種類あります。

 

 

2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計157日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜2019年4月30日(火))
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

各コメントの要約付きの過去のリンク その2(2019年5月1日(水)〜)
http://citizen2.nobody.jp/html/201905/PastLinksWithASummaryOfEachComment2.html

 

 



【コメント】
LIXILグループの委任状争奪戦に関する記事を紹介しています。
また、金融商品取引法の教科書から「委任状勧誘」についての説明部分をスキャンして紹介しています。
今日は、以前紹介した教科書のスキャンについて補足をしたいと思います。
2019年5月21日(火)のコメントで、「委任状勧誘と書面投票」というタイトルのコラムを教科書からスキャンして紹介しましたが、
このコラムは実は大部分が間違っています。
全5段落中、第1段落と第5段落の記述内容は正しいのですが、第2段落から第4段落の記述内容は間違っています。
まず最初に、第2段落には、次のように書かれています。

>現在では、会社法が株主数が1,000人以上の会社に対して原則として書面投票の利用を
>義務付けていること(会社法298条第2項本文)に加え、取引所規則が上場企業による書面投票制度の利用を
>義務付けている(有価証券上場規程435条本文)ことで、上場企業の場合、
>議決権行使書面と株主総会参考書類を招集通知に添付することが通例となっています(会社法301条1項)。

私はコラムを一読して「おかしなことが書かれているな。」と思いました。
改めて会社法の該当条文と有価証券上場規程の該当条文を読んでみましたが、
コラムに説明があるような事柄は定められていません。
率直に言いますと、会社法第298条第2項の条文の意味自体が判然としないところがあるのですが、
「取締役は、株主は書面によって議決権を行使するよう定めなければならない。」
という意味であるとは解釈できないと私は思います。
1年程前に書いたことですが、「株主が書面によって議決権を行使することは、株主が株主総会に出席しない(出席できない)
場合を想定してのことである。」という趣旨のことを私は書いたことがありますが、その考え方が正しいと今でも思います。
つまり、会社法上の書面投票制度というのは、「株主が株主総会に出席しない(出席できない)場合」のみ利用可能なことなのです。
株主自身が株主総会に出席して直接議決権を行使する際には、「会社法に定義される『書面による議決権行使』」はできないのです。
次に、第3段落に関してですが、議決権の代理行使(委任状による議決権行使)と書面による議決権行使とは、
全く関係がありません(コラムにはなぜか両者は関連があるかのように書かれていますが、それは間違いです)。
議決権の代理行使(委任状による議決権行使)は、書面による議決権行使の一類型やその代替的行使手段では決してありません。
委任状それ自体は確かに紙(書面)なのですが、委任状は受任者が委任者(株主)を真に代理しているということを
証明する書面に過ぎないものであり、議決権の行使それ自体とは関係がないものなのです。
次に、第4段落に関してですが、書面投票制度との相違点について、第4段落には、次のように書かれています。

>委任状を用いた議決権の代理行使であれば、受任者は株主総会の議論に参加したうえで議決権を行使することになります。

この記述は根本的に間違っています。
議決権の代理行使(委任状による議決権行使)というのは白紙委任では決してありません。
委任状には、議案毎に賛否を記載する欄が設けられています(つまり、株主自身が受任者に議案毎の賛否を指定するわけです)。
さらに、議決権の代理行使(委任状による議決権行使)では、株主は株主総会に出席しないからこそ、
株主総会における議論を補足・補完するために、勧誘者はその相手方に対し「参考資料」を交付しなければならないのです。
「参考資料」の記載事項や形式については法令に詳細な規定が置かれている(勧誘者から株主に交付される「参考資料」は、
株主総会における主義主張の"Pre-presentation"(株主総会開催日前のプレゼンテーション)でなければならない)わけですが、
現代の証券制度においては、勧誘者が行う記者会見もまた株主にとっては投資判断に資する「参考資料」の1つと言えるでしょう。
最後に、蛇足になりますが、この教科書全般を執筆している人とコラムを執筆している人は別の人なのだろうかと思いました。