2019年5月12日(日)



2019年5月8日(水)日本経済新聞
LIXIL 会社側が取締役提案へ 臨時総会見送りの公算
(記事)




2019年5月10日(金)日本経済新聞
臨時総会請求取り下げ LIXIL海外投資家ら
(記事)



「会計学辞典 第五版」 森田哲彌、宮本匡章 編著 (中央経済社)

「経費」("Other Manufacturing Expenses")
 

 


2019年5月9日
株式会社LIXILグループ
株主による臨時株主総会招集請求の取り下げに関するお知らせ
ttps://ssl4.eir-parts.net/doc/5938/tdnet/1700321/00.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)





2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計145日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜2019年4月30日(火))
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

各コメントの要約付きの過去のリンク その2(2019年5月1日(水)〜)
http://citizen2.nobody.jp/html/201905/PastLinksWithASummaryOfEachComment2.html

 

 


【コメント】
LIXILグループについての記事を2本紹介していますが、
今日は、昨日のコメントに一言だけ追記をし、紹介している記事を題材にして一言だけ書きたいと思います。
まず、昨日のコメントに一言だけ追記をしたいのですが、昨日のコメントでは
「商標権の減価償却費を製造原価の経費勘定(棚卸資産勘定)に振り替えるという会計処理が考えられる。」と書いたわけですが、
議論の題材として、製造原価(原価計算基準)における「経費」についての説明を「会計学辞典」から紹介しています。
原価計算基準にいう「経費」項目中の「減価償却費」勘定は、有形固定資産(工場内の建物や設備や機械装置や工具器具備品等)
の減価償却費をどこか定義上の前提としているようにも思われる(原価計算基準上は明文の定義はないようです)のですが、
私は昨日、「商標権の減価償却費も製造原価の『経費』勘定を構成し得る。」と書いたわけです。
例えば、かつての松下電器産業株式会社では、「ナショナル」という商標と「パナソニック」という商標の2つの商標を
製品群やブランドイメージに応じて経営上明確に区別をして用いていたわけですが、
期間費用として(販売費及び一般管理費の一項目として)商標権の減価償却費を計上するのは損益管理上厳密ではないわけです。
いわゆる旧来からの白物家電の製造工程では「ナショナル」という商標権勘定の減価償却費を「経費」として計上するべきであり、
高級ブランドを訴求する製品群の製造工程では「パナソニック」という商標権勘定の減価償却費を「経費」として計上する、
という会計処理方法が、管理会計上も財務会計上も求められるように私は思うわけです。
すなわち、「ナショナル」という商標権の減価償却費は「ナショナル」という商標を付している製品群が負担をするべきであり、
「パナソニック」という商標権の減価償却費は「パナソニック」という商標を付している製品群が負担をするべきなのです。
たとえ営業権の減価償却費を期間費用として一括して計上しても、損益計算書上の営業利益の金額は確かに同じになるわけですが、
「ナショナル」ブランドの製品群の損益と「パナソニック」ブランドの製品群の損益とを明確にするためには、
商標権の減価償却費はそれぞれの商標が付された製品群が負担をするべきなのです。
「ナショナル」という商標権の減価償却費は「ナショナル」ブランドの製品群の製造原価の「経費」に含まれるべきであり、
「パナソニック」という商標権の減価償却費は「パナソニック」ブランドの製品群の製造原価の「経費」に含まれるべきなのです。
かつての松下電器産業株式会社にとっての「ナショナル」という商標と「パナソニック」という商標がまさにそうであるように、
自社の商標というのは貸借対照表に計上されません(会計上の勘定科目ではない)のです(貸借対照表に商標権が計上されるのは
他者から取得した場合のみ。商標権の取得原価が貸借対照表に「商標権」勘定として計上される)が、水平的多角化を行うなど
会社が他者から商標権を複数購入した場合は、商標権の減価償却費をそれぞれの製品群の製造原価に紐付けねばならないわけです。
商標権が複数ある場合が特に理解のヒントになると思うのですが、商標権の減価償却費は製造原価に含めるべきなのです。
また、商標権の減損損失は、やはり「少なくとも製造原価ではない。」(損益計算上も正しくない)という捉え方になります。
減損損失というのは、結局のところ、収益と紐付けようがない損失(収益との対応を考えるべき損失項目ではない)のです。
次に、LIXILグループについてですが、LIXILグループの事例については2019年5月6日(月)のコメントで一言だけ書きました。
LIXILグループに対しては、海外の機関投資家4社(請求人)が2019年3月20日に臨時株主総会の招集請求を行っていたのですが、
2019年5月9日にその請求が取り下げられた、とのことです。
その理由は、「取締役2名解任」が臨時株主総会の招集の目的であったわけですが、
その取締役2名が2019年5月20日付けで自ら辞任をする意思表示をしているからであるとのことです。
私としましては、請求人は臨時株主総会で新たな取締役を選任するつもりであったのではないだろうかとも思うのですが、
請求を撤回したということは、純粋に「取締役2名解任」のみが臨時株主総会の招集の目的であったということなのでしょう。
LIXILグループは海外の機関投資家4社からの請求を受けた後すぐに臨時株主総会の基準日を定め、
2019年5月下旬を目処に臨時株主総会を開催すべく検討と準備を進めていたところを見ると、
会社側としては臨時株主総会の開催と議案の採決には反対ではなかったということなのだろうと私は思います。
今後6月下旬に開催される定時株主総会で新しい取締役を選任することにすればその後の会社運営を鑑みればそれで十分である、
と会社側も海外の機関投資家4社側も考えているということなのだと思います。
より一般的なことを言えば、定時であれ臨時であれ、実務上は既存役員の解任と新役員の選任は1セットであると私は思います。